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寝取られ・寝取り・寝取らせなどをテーマに官能小説を書いています

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愛のすきまで交わって・10

「古沢さんは?」
「あー、まあいい人だとは思うけど……」
 希恵子自身が会話に加わることはほとんどなかったが、友人同士で身近な男の品評会が開催された時、和臣に対して最も多く下された評価がそれであった。
 いい人だけど、頼りない。
 いい人だけど、将来性がない感じ。
 いい人だけど、エッチとか下手そう。
 さすがにそこまではっきり口にする者は少なかったが、だからといって「けど」が消滅するわけでもない。和臣を表す上で「いい人」と「けど」は枕詞のように切り離すことのできない言葉だった。
 だが、希恵子は胸を張って断言することができる。
 そういう人だったからこそ、自分は和臣に惹かれたのだ、と。
 昔から言い寄ってくる男は少なくなかったが、その誰もがいやらしく下品な――ちょうど、今の黛のような目で――自分を見た。それがたまらなく怖かったし、不快だった。
 だが、和臣からそんな淀んだ空気を感じたことは、ただの一度もなかったのだ。
「頼りない」は「でも優しい安心感がある」と。
「将来性がない」は「だったら自分が支えてあげたい」と。
「エッチとか下手そう」は「誠実で真っ直ぐな愛情があればそんなことは関係ない」と。
 そんな風に一途に思い続けた結果、希恵子は念願叶って和臣と夫婦になることができた。
 和臣はいつだって他の何にも代えられない安らかな幸せを与えてくれる。
 希恵子にはそれが何より嬉しかったし、それだけで十分に満たされていた。
 なのに、この黛匡一という男は。
「世の中分からないものですよ。あの和臣くんにこの奥さんですからね。金があるわけでも、仕事ができるわけでもない。でも嫁さんは驚くほど綺麗。本当、理不尽なもんです」
 希恵子の幸せを平気な顔で踏みにじり、勝手な言葉をつらつらと並べるばかりだ。
「理不尽って……」
「ふふ、でもまあ、そう捨てたものでもないですかね」
 悔しそうに唇を噛む希恵子に、黛は口の端を歪めながらにやりと笑いかける。
「いつか何とかしたい。そう思っていたところに絶好の機会が巡ってきた。それをつかんで、こうして奥さんの身体を手に入れることができた。悪くないと思いますよ」
「そんな、言い方……」
「間違ってはいないでしょう? 我々の関係はあくまでも身体だけ。しかもたった三ヶ月だ。大したことじゃないんですから、もっと気楽にいきましょうよ、気楽に」


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[ 2017/12/03 11:57 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・9

(何なのよ、もう……)
 その陰湿なまでの用意周到ぶりに、希恵子はますます黛への嫌悪を強くする。
(でも……)
 ホテルが閑静な場所にあって、人目につく心配が全くない点に関しては少しほっとした。
 何しろ、世間は広いようで狭い。
 黛と一緒の場面を誰かに見られたら。
 ましてや、ホテルへの出入りを目撃などされようものなら。
 希恵子にとってその事態は、恐怖以外の何物でもなかった。
「よい、しょっと」
 入口近くでマネキンのように突っ立ったまま動こうとしない希恵子を尻目に、黛は奥にある一人用の椅子をずるずると引きずり出して座った。
「ようやく、たどり着きましたよ」
 ふんぞり返るように背を反らすと、長年探し求めていた宝物を手に入れたような、達成感のある声で呟く。
「……」
 立ち尽くす希恵子の顔に、不快感がじんわりとにじんだ。
「最初はこんなつもりじゃなかったんですよ、本当に。よく行くバーで和臣くんと知り合い、何度か話すうちに自然と相談を受けるようになった。それだけなんです」
「……」
 どこか弁明めいた黛の言葉にも、希恵子はやはり沈黙を貫く。
 本心とは到底思えなかったし、今さらそんなことなどどうでもいいという、どこか捨て鉢な感情もあった。
 とにかく、自分はこれから借金のかたになるのだ。
 虚しさ、失望、やるせなさ。そして何より、和臣への後ろめたさ。
 そういった負の感情だけが次々と押し寄せ、希恵子の心を腐ったヘドロのようにどろどろと侵食していく。
「でも初めて奥さんの写真を見せてもらった時、こう、びびっと来たんですよ。電流が走るというか、雷が落ちたというか……。いつか、チャンスがあれば。すぐ、そう思いました」
 希恵子の心情などまるで慮ることなく、黛はなおも語った。
「こんな言い方はなんですが、奥さんが美人で、正直意外だったんです。何せあの和臣くんのお相手ですからね。彼は善人かもしれないが、決して女にモテるタイプではない」
「……」
 歯に衣着せぬ黛の放言に、希恵子がむっとした顔で眉をひそめる。
 でもそれは、確かに事実ではあった。結婚する前、いや、知り合った当初の学生時代から、和臣の周囲には浮いた話一つ聞こえてくることがなかった。


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[ 2017/12/02 11:38 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・8

「さて。では話も決まったことですし、さっそく出かけるとしましょうか」
「え? あ、あの」
 そそくさと立ち上がった黛を引き止めるように、希恵子が声をあげた。
「その、出かけるなら、着替えと化粧を……」
 困惑の色を浮かべながらも、そう訴えかける。
 こんな時に何を言っているのかと自分で思わなくもないが、何しろ今は全くの普段着に家で過ごす用の薄化粧。とてもじゃないが、外になど出られる身なりではない。
「ああ、そのままで結構ですよ。車は玄関前に置いてありますし帰りもお送りします。人目につくことは全くありませんので、どうぞご安心ください」
 要望をあっさり却下すると、黛はゆっくり希恵子の背後に回って、華奢な肩にぽん、と一つ両手を置いた。
「それに……」
 伸びやかなバリトンが、頭上に響く。
「その格好の方が、興奮しますので」
「……」
 口調はあくまで柔らかなまま、しかし有無を言わさぬ力で上から肩を抑えつけてくる黛に、希恵子は己に残された選択肢がもはや一つしかないことを悟った。

          *   *   *

 ここは、とあるホテル。
 といっても、別に「高級」や「豪華」などといった冠がつくわけではない。希恵子の家から一番近い、静かな佇まいのラブホテルである。
「こちらです」
 比較的値が張るとおぼしき一室のドアをカードキーで開けると、黛は恭しい態度で希恵子を室内へ招き入れた。
(やっぱり……)
 この男は初めからそのつもりだったのだ。
 おずおずと部屋に足を踏み入れながら、希恵子は改めてそう確信する。
 チェックインをしなかったのにポケットからルームキーを出したのが何よりの証拠。事前に部屋を確保したうえで自宅に押しかけてこなければ、こんな真似はできないはずだ。


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[ 2017/12/01 12:35 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・7

「あなた自身ですよ、奥さん」
「!」
 希恵子の顔から、さっと血の気が引いた。
「そ、そんな……」
 一瞬のうちに、全てを理解する。
 この黛匡一という男の目的は最初から自分、いや、自分の身体だったのだと。
 借金で自分を縛りつけた上で辱め、陵辱し、慰みものにする。
 それしか、考えていないのだと。
「そんな、こと……」
 胸に渦巻くこの感情は、恐怖だろうか、それとも怒りだろうか。
 おぞましいほどの寒気が希恵子の背筋を一気に駆け抜け、ざわざわと総毛立つような感覚が全身を包んだ。
「しばらく……そうですね、三ヶ月ほど私のものになってください。そうすれば、立て替えた借金の返済は無用、全てを帳消しにしてあげます。もちろん和臣くんにもうまく理由を付けてこちらから説明してあげますよ」
 そう言って一見紳士然とした笑みを浮かべる黛に、
「わ、私のものって……」
 希恵子は身をすくめたまま、すっかり言葉を失ってしまう。
「なーに、どうってことはありませんよ。奥さんがちょっと割り切りさえすれば、全てが丸く収まるんです。簡単な話でしょ?」
「なっ……」
 軽い調子で自らの見解を述べる黛を、希恵子が剣呑な目で睨みつけた。
 だが、それ以上何ができるというわけでもない。
 夫婦とも既に両親はなく、親戚付き合いもゼロ。金策のあてなどまるでない二人にとって、黛の提案を蹴ることは即ち身の破滅を意味している。
「っ……!」
 喉の奥に熱い塊をつかえさせながら、希恵子が美しく整った顔を苦しそうに歪めた。
「まあ、どうしても断るというなら止めはしませんが……その時はこのお話、全部パーです。せいぜい夫婦仲よく、借金地獄を歩んでください」
「な、何て……酷い人……」
 もはや脅迫の色を隠しもせずに滔々と押し込んでくる黛に、希恵子はやっとのことで一言、非難を返す。
「ふむ、酷い人、ですか……」
 だが黛は、わざとらしくあごに手を当て、何やら考える素振りを見せたかと思うと、
「いやいや、綺麗な女性にそう評価されるのは決して悪い気分ではありませんな」
 にやりと薄い笑みを浮かべ、余裕の態度でそう嘯いてのけるばかりだ。


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[ 2017/11/30 12:50 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・6

「そんなわけですから五百万プラス現段階での利息くらいなら今すぐにでもご用立てできるんですよ、私。せっかくある金なんだから、有意義に使った方がいい。今こうしているうちにも利息はどんどん増えていくので動くなら早い方がいいと思いますが……いかがですか?」
 話を本筋に戻すと、黛は急かすような調子で決断を促した。
「……」
 希恵子は、迷う。
 咄嗟の判断で決めてしまうにはあまりに問題が大きすぎるし、そもそもこれは自分で勝手に決断していい性質の話ではない。
「……お話は分かりました。仮に立て替えていただくにしても、返済の方法とか色々と問題がありますし、まずは夫と相談させてください。その上で改めて――」
「おっと、ちょっと待って下さい、奥さん」
 ひとまず逃げを打とうとした希恵子を、黛が手を上げて制した。
「和臣くんには一切秘密で。話したら、この件は全部なかったことにさせてもらいます」
 声を潜めて、そう言葉をつなげる。
「……え?」
 いきなりの条件に、希恵子の顔が不審そうに曇った。
「まあこの場合、秘密にしないと困るのはむしろ奥さんということになるでしょうけど」
「……?」
 持って回った言い方でもったいぶる黛を、希恵子はさらに怪訝な表情で見つめる。
「さっきもお話しした通り、私は金銭面では十分な余裕があります。返済など不要だ、とまで豪気にはなれませんが、どうせだったら他の、もっと価値があるもので返していただいた方がありがたいんですよ」
 黛の声音が、じわじわと圧力を増した。
「もっと価値があるもの……ですか?」
 一方希恵子は、単純な鸚鵡返ししかできない。
「そう、価値があるもの」
「何でしょう。うちにはそんな財産なんて……」
 同じ言葉を繰り返す黛に、希恵子がますます分からないといった表情で首を傾げた。
「あるじゃないですか。とっておきの、極上品が」
 薄暗く濁った光を眼に宿しながらそう言うと、黛は胸の前で両手を組み、右足をゆっくりと左膝に重ねる。


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[ 2017/11/29 11:48 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)