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愛のすきまで交わって・7

「あなた自身ですよ、奥さん」
「!」
 希恵子の顔から、さっと血の気が引いた。
「そ、そんな……」
 一瞬のうちに、全てを理解する。
 この黛匡一という男の目的は最初から自分、いや、自分の身体だったのだと。
 借金で自分を縛りつけた上で辱め、陵辱し、慰みものにする。
 それしか、考えていないのだと。
「そんな、こと……」
 胸に渦巻くこの感情は、恐怖だろうか、それとも怒りだろうか。
 おぞましいほどの寒気が希恵子の背筋を一気に駆け抜け、ざわざわと総毛立つような感覚が全身を包んだ。
「しばらく……そうですね、三ヶ月ほど私のものになってください。そうすれば、立て替えた借金の返済は無用、全てを帳消しにしてあげます。もちろん和臣くんにもうまく理由を付けてこちらから説明してあげますよ」
 そう言って一見紳士然とした笑みを浮かべる黛に、
「わ、私のものって……」
 希恵子は身をすくめたまま、すっかり言葉を失ってしまう。
「なーに、どうってことはありませんよ。奥さんがちょっと割り切りさえすれば、全てが丸く収まるんです。簡単な話でしょ?」
「なっ……」
 軽い調子で自らの見解を述べる黛を、希恵子が剣呑な目で睨みつけた。
 だが、それ以上何ができるというわけでもない。
 夫婦とも既に両親はなく、親戚付き合いもゼロ。金策のあてなどまるでない二人にとって、黛の提案を蹴ることは即ち身の破滅を意味している。
「っ……!」
 喉の奥に熱い塊をつかえさせながら、希恵子が美しく整った顔を苦しそうに歪めた。
「まあ、どうしても断るというなら止めはしませんが……その時はこのお話、全部パーです。せいぜい夫婦仲よく、借金地獄を歩んでください」
「な、何て……酷い人……」
 もはや脅迫の色を隠しもせずに滔々と押し込んでくる黛に、希恵子はやっとのことで一言、非難を返す。
「ふむ、酷い人、ですか……」
 だが黛は、わざとらしくあごに手を当て、何やら考える素振りを見せたかと思うと、
「いやいや、綺麗な女性にそう評価されるのは決して悪い気分ではありませんな」
 にやりと薄い笑みを浮かべ、余裕の態度でそう嘯いてのけるばかりだ。


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[ 2017/11/30 12:50 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)
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