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寝取られ・寝取り・寝取らせなどをテーマに官能小説を書いています

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愛のすきまで交わって・35

(でも……)
 その一方でむくむくと首をもたげてくるのは、黛への反発心。
 愛情と金銭の有無は関係ない。
 黛の理屈だと、貧乏人の夫婦愛は安っぽいということになってしまうではないか。
 断じて、そんなことはないはずだ。
 ましてこんな男が「鍛えられた安くない人間」であるというなら、自分は安い人間で大いに結構だとすら思えてくる。
「では」
 心の中で気勢を上げる希恵子をよそに、黛は壁掛けの大型テレビへ足を向けた。
「本題に入るとしましょうか」
 そう言って、テレビ下の細長い穴に差し込まれたプレイヤーにDVDをセットする。
 すぐに、再生が始まった。
 チープなBGMに乗って、安っぽい字幕のタイトルがでかでかと画面を占領する。
「……は?」
 希恵子の声が、綺麗に裏返った。
「に、人気女優、ソープランド……どきどき初体験?」
 唖然とした表情のまま、長いタイトルの要点だけをかいつまんで口にする。
「はい、そうです」
 黛は柔らかな、しかしいかにも腹に一物抱えている感じの顔でにっこりと頷いた。
「商業用のAVなんですけど、これがなかなかいい出来と評判でしてね。実際の店でも研修に使われたりしているそうです」
「は、はあ……」
 希恵子はどうにかそれだけ答えたが、後につながる言葉はない。
 平日の昼下がりにラブホテルへ連れ込まれ、ソープもののAVを見せられる。そんな異常な状況を受け入れる覚悟など、はなから持ち合わせているはずもなかった。
「で、奥さんにもこの技術を習得してもらおうと思います」
「……え? えぇっ?」
 考えられないような展開は、さらに続く。
「今日中にできるだけマスターしてもらいますよ。もっとも、もちろん報酬はありませんし、客はいつまで経っても私一人なんですが」
「きゃ、客って……」
 うろたえる希恵子を尻目に、黛はそそくさとリモコンを操作。プレイ部分まで場面を早送りすると、タイミングよく一時停止のボタンを押した。


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[ 2017/12/28 11:28 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・34


          *   *   *

 黛との次なる逢瀬は、三日後であった。
 場所は、同じホテルの同じ一室。
 元々値段の高い部屋であることに加えて、二人とも衣服を身につけたままソファーに並んで座っているため、ぱっと見には爛れた関係というより小旅行に訪れた夫婦のようである。
「……」
 希恵子は隣に座る黛を警戒しながら、身動き一つせず沈黙を守った。
 とにかく、何度抱かれようが気にしない。
 今日こそは何をされようが人形のように心を殺して、ただ時間が過ぎるのを待つだけ。
 三日間かけて固め直した己の意志をぶつけるように、希恵子は視線にあらん限りの威圧感を込めて黛を睨みつける。
「さて、と。今日はまずこちらを見てもらいましょうか」
 希恵子の目など何ら気にするでもなしにそう言うと、黛は手元のカバンから一枚のDVDを取り出した。
「まあ、こいつでも飲みながら」
 続いて水筒型の魔法瓶とコーヒーカップを引っ張り出し、慣れた様子でとぽとぽと焦茶色の液体を注ぐ。
「さ、どうぞ召し上がれ」
 恭しい手つきで、希恵子の前にカップを差し出した。
「……」
 ほんのりと苦味の混じった芳ばしい香りが、ふんわり優しく希恵子の鼻腔をくすぐる。
(何だっていうの、一体……)
 本当はさっさと事を済ませて帰りたかったのだが、この流れではそうもいかない。
「いただき……ます」
 一応それだけ言うと、希恵子はカップに口をつけ、中身をちびりとすすった。
「……美味しい」
 思わずこぼした一言は、嘘偽りのない、本心。
「でしょう。今日のは自信作なんですよ」
 黛が、コーヒー豆を連想させる薄褐色の顔面に、言葉通りの自信ありげな笑みを浮かべた。
「こういう言い方はなんですが結構な高級品です。豆を取り寄せるところから始めて、全てを自分で仕上げました。インスタントも悪くはないが、たまには手間ひまかけてこういう本物を味わい、舌を鍛えた方がいいでしょう。安物に慣れすぎると人間、心まで安くなります」
「……ええ」
 少々押しつけがましい黛の持論を、希恵子はあえて否定しなかった。
 確かにそれは、一面の真実だとは思う。
 長い貧乏暮らしですっかり所帯じみた感覚が染みついてしまった希恵子には、少々耳の痛い言葉でもあった。


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[ 2017/12/27 11:28 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・33

「……」
 下腹部に、そっと手を伸ばす。
 昨日の興奮が蘇って、まだ少し黛の余韻を残す股間がじわりと疼いた。
「いえ、いいえ!」
 思わず、声が荒くなる。
 性的に興奮したからといって、それが何だというのか。
 人間にとって最も大事なものは、愛情。
 それがない交わりなど、単なる獣の所業でしかない。脅迫でもされなければ、そんな行為に身を委ねることなど決して有り得ないのだ。
 溺れてなんか、いない。
 快楽に呑まれてなんか、いない。
 負けてなんか、いない。
「っ……」
 腹の底から、苦い塊のようなものがこみ上げてくる。
 もう一歩でも進めば間違いなく嗚咽になるその感情を、希恵子は喉を詰まらせながら懸命に胃の腑へ飲み下した。
「ふう……」
 小さく息を吐いて頭を振ると、手にした下着をすぐに干す。
(早く忘れたい……いえ、忘れないと)
 残りの洗濯物も手早く片づけてしまうと、希恵子は気分を切り替えるように、よし、と一言呟いた。
 とにかく、事態は動き出してしまったのだ。
 もう、後に退くことはできない。
「たった、三ヶ月だもんね」
 自分自身に言い聞かせるように囁かれた希恵子の声が、風にはためく洗濯物の壁に遮られてどこへともなく消える。
「さ、おしまいおしまい」
 ことさらに明るい声で言いながら、希恵子は部屋に戻った。
「次はお掃除っと」
 窓を閉めた時、ちらりと視界に入った左手薬指の輝きを、希恵子はわざと見ないようにして前を向いた。


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[ 2017/12/26 11:46 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・32


 それは、新婚初夜のこと。
 お互い、初体験だった。
 それまでにも何度か機会はあったが、和臣の意志もあって結局キス止まりで終わっていた。
「和臣さん……その……したく、ないの?」
 希恵子は交際中に一度だけ、そう尋ねてみたことがあった。
 男の人には男の人の生理があるだろうに、辛くないのかと疑問に思った。
(もしかして、女では興奮しない人なのかしら)
 今考えるとただの笑い話だが、一時は半ば本気でそう勘ぐったこともあった。
「僕は希恵子さんのこと、本当に大事にしたいと思ってる。だから無責任なことはできない。しかるべき手順を踏んでその時に結ばれれば、それが一番だよ」
「和臣さん……」
 真面目な顔で真意を語った和臣に、希恵子は心の底から感激の念を抱いたものだ。
 そうして迎えた、二人だけのささやかな結婚式の後の、初夜。
「き、希恵子さん! 希恵子さん!」
「え、えっ? きゃっ!」
 交わりは、あっという間に終わった。
 挿入してからものの数秒で果ててしまった和臣に、希恵子は破瓜の痛みを感じている暇すらなかった。

 その後も、和臣は短い時間で射精してしまうことがほとんどだった。
 何しろ他の相手と経験がないため、男の人はそういうものだと思い込んでいた希恵子だが、昨日黛と肌を重ね、その認識は百八十度改められた。
「っ……」
 黛のたくましい肉体、そして男根が思い出される。
 圧倒的だった。
 自分の奥深くを掘り起こされ、弱い部分を徹底的に責められる、あの感触。
 物言わぬ人形であろうとした希恵子の意志は完膚なきまでに粉砕され、みるみるうちに数え切れないほどの絶頂へと誘われてしまった。


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[ 2017/12/25 11:35 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・31

          2

 黛との情事から、一夜が明けて。
「はぁ……」
 和臣をいつも通り会社へ送り出してから、希恵子はせっせと洗濯に励んでいた。
 昨日洗濯物を溜め込んでしまったせいで、平屋の狭いベランダには洗いたての服やタオルがびっしり、ところ狭しと並んでいる。
「よい、しょっと」
 身を屈めて、洗濯かごに手を伸ばした。あとはこの下着類を角型ハンガーに吊るせば作業は全て終了。
「あ……」
 だが最初の一枚を手に取った瞬間、希恵子の顔が強張った。
 それは、昨日黛に、夫以外の男に初めて晒した、白いレースのパンティー。
「いやあ、実に素敵な時間でした」
 全ての行為を終えて着替えた後、大した疲労も見せずにそう言って笑った黛の顔が、脳裏にまざまざと蘇った。
「っ……」
 下着を握る手に、力がこもる。
(あんなこと、四度も……)
 とことんまで組み伏せられ、突き上げられ、精を注ぎ込まれた。
 どれだけ心が拒否しても、身体の方は黛の凶暴なまでにオス臭い男性自身に、完璧なまでの屈服を強いられてしまった。
 特に最後、風呂場での四度目。
「あぁっ! イクっ、イクっ! ああぁーーーっ!」
 あの時、希恵子は確かに涎を垂らした。だらしなく大口を開けて、我を忘れたような大声でよがりによがってしまったのだ。
 決して、認めたくなどない。
 だが、あの感覚は、間違いなく――。
「い、いいえ、いいえ」
 希恵子は何度もかぶりを振ると、頭をよぎる卑猥な思考を力ずくで追い払った。
 そんなことはない。
 あんな愛情のかけらもない身体だけの結びつきで、気持ちよくなどなるはずがない。
「和臣、さん……」
 夫の名をぽつりと呟くと、希恵子は左手薬指の指輪に視線を落とした。
 それは、どれだけ経済的に困窮しても、身体のつながりなどなくても、決して揺らぐことのない和臣と自分との、絆。小さな宝石さえついていない、本当に金属が輪になっているだけの質素な品だが、それでも希恵子にとっては生涯の宝だ。
(そういえば……)
 不意に、和臣と初めて結ばれた時の記憶が、浮かんできた。


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[ 2017/12/24 13:18 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)