それは、新婚初夜のこと。
お互い、初体験だった。
それまでにも何度か機会はあったが、和臣の意志もあって結局キス止まりで終わっていた。
「和臣さん……その……したく、ないの?」
希恵子は交際中に一度だけ、そう尋ねてみたことがあった。
男の人には男の人の生理があるだろうに、辛くないのかと疑問に思った。
(もしかして、女では興奮しない人なのかしら)
今考えるとただの笑い話だが、一時は半ば本気でそう勘ぐったこともあった。
「僕は希恵子さんのこと、本当に大事にしたいと思ってる。だから無責任なことはできない。しかるべき手順を踏んでその時に結ばれれば、それが一番だよ」
「和臣さん……」
真面目な顔で真意を語った和臣に、希恵子は心の底から感激の念を抱いたものだ。
そうして迎えた、二人だけのささやかな結婚式の後の、初夜。
「き、希恵子さん! 希恵子さん!」
「え、えっ? きゃっ!」
交わりは、あっという間に終わった。
挿入してからものの数秒で果ててしまった和臣に、希恵子は破瓜の痛みを感じている暇すらなかった。
その後も、和臣は短い時間で射精してしまうことがほとんどだった。
何しろ他の相手と経験がないため、男の人はそういうものだと思い込んでいた希恵子だが、昨日黛と肌を重ね、その認識は百八十度改められた。
「っ……」
黛のたくましい肉体、そして男根が思い出される。
圧倒的だった。
自分の奥深くを掘り起こされ、弱い部分を徹底的に責められる、あの感触。
物言わぬ人形であろうとした希恵子の意志は完膚なきまでに粉砕され、みるみるうちに数え切れないほどの絶頂へと誘われてしまった。
※全文をまとめ読みしたい方はこちらから!
- 関連記事
-