「では、早速ですが」
黛が希恵子の腹に腕を回すと、寝技でも仕掛けるように身体を押しつけ、うつ伏せにする。
「次は四つん這いになってみましょうか」
立ち上がってベッドから下りると、静かな声でそう促した。
「なっ……」
希恵子の頬が、またもや羞恥の朱に染まる。そんな動物みたいな格好、和臣にだって見せたことはない。
「どうしました?」
一見温和な態度の黛だが、その慇懃さは単なる仮面。現実に希恵子を待ち受けているのは、もちろん問答無用の強制であった。
「っ……」
希恵子がおずおずと身体を動かし、手と膝をついて腰を上げる。
割れ目の入った白くて丸い桃肉が、星空に煌々と輝く満月のように、ゆっくり、ゆっくりと上にのぼった。
それはさながら、肉欲に満ちた月見の宴。
「ほう、これはいい眺めですね」
「う、うぅ……」
恥辱の上塗りをするような黛の一言に、希恵子の全身が焼けるように熱くなっていく。
「……ふむ」
ふわふわと中空に浮かぶ桃尻を心ゆくまで堪能してから、黛が満足そうに一つ頷いた。
「いいですね。合格ですよ、奥さん」
「え? 合格って……」
黛の言葉に、希恵子は思わず後ろを振り向く。
「ちゃんと腰骨がお尻よりも低くなってます。個人的にはこの方がそそるんですけど、これができない女が多くてね。山みたいな形になるのが結構いるんですよ。まあもちろんそんな女はすぐ願い下げとなるわけなんですが」
「……」
自分の偏った趣味を饒舌に語る黛に、希恵子はさらなる憎悪の目を向けた。
こんな悪趣味な自分勝手に付き合わされた挙句、不当に貶められた女性はさぞ迷惑であったことだろう。一面識もない人のことながら、希恵子は同情に堪えない気分になる。
(でも……)
反面、ほっとしたのも事実であった。悪趣味でも何でも、とにかく今は「願い下げ」だけは回避しなければならない。
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