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寝取られ・寝取り・寝取らせなどをテーマに官能小説を書いています

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愛のすきまで交わって・60

「何で……こんなことに……」
 埃一つないフローリングをぼんやりと見つめながら、希恵子が呟く。
 初めて黛と会ったあの日、全てを断っていれば事態は全然違っていたのだろうか。
 いや、それを言うなら、そもそも誰かさんが借金なんてしなければ――。
「っ……」
 思わず夫への不満をこぼしそうになり、希恵子は慌てて口をつぐんだ。
『妻には僕のせいで苦労ばかりかけてますから、少しでも家計を楽にできればと……』
 レコーダーから流れた和臣の涙声は、間違いなく本物。そしてそこから発せられた内容は、
まぎれもない夫の、本心。
 和臣は決して、私利私欲に目が眩んだわけではないだろう。家計を、そして希恵子のことを少しでも楽にしたい一心で、慣れない投資などに手を染めたに違いない。
 愚痴をこぼすことこそなかったが、和臣が自身の収入の少なさをずっと気に病んでいたのは希恵子もよく知っている。
「そう、よね……」
 重要なのは、和臣が自分のためを思ってくれたその心。
 失策を犯したからといって夫を足蹴にする真似など、希恵子にはできるはずもなかった。
「でも……」
 希恵子がまた、カレンダーを見つめる。
 だからといって、これ以上黛との情事を続けるのも許されない気がした。
 倫理とかモラルとかそういった問題だけではなく、もっと心の奥深くの、いわば本能に近い部分で、自分の中の何かが揺らいでいるように思えた。
 いくら心の中で和臣への操を守っているとはいっても、現実として身体の方は肉欲をまるで制御できていない。
『どうせ、ばれることはないだろうし……』
 結果として和臣からの電話に救われる形になったが、あの時ほんの一瞬、黛に身を委ねてもいいと思ってしまったのは、偽りない事実であった。
(あんな、人……)
 希恵子の中で、黛への認識は何も変わっていない。
「不快な酷い人」
 その評価は、初対面から今日に至るまでずっと一貫していた。
 それなのに、黛を相手にすると希恵子の肉体はまるで別人のように過敏な反応をみせる。
 どれだけ黛に悪意を持って臨んでみても、抱かれれば必ず感じてしまうのだ。
 今となってはもはや記憶すらおぼろげだが、和臣とのセックスでこうも身体が疼いたことはただの一度もなかった。
 黛と交わり、肉の悦びを感じれば感じるほどに、和臣への罪悪感は増す。
 そして背徳の心理が深まれば深まるほど、その快感はよりいっそうの重みをもって希恵子の全身に巣食っていった。


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[ 2018/01/30 11:48 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・59

          3

「少し、遅れるかしら」
 一日分の家事を終え、最低限の身繕いを済ませた希恵子が出かける準備をしていた。
 もう何度目になるかも分からない、黛との逢瀬。
 そのたびに繰り返されてきた所作を淡々と、しかしできるだけ急いでこなしていく。
 だが今日に限って、希恵子は妙な違和感を覚えた。普段は目につかないものが、急に視界の隅をよぎる。
「?」
 ぐるりと周囲を見回して、異物の正体を突き止めにかかった。
「……あ」
 答えは、壁にかけられたカレンダー。
 ある一日に花丸で印がつけられ、その下の空白には希恵子の字で「結婚記念日」と記されていた。その前日には「和臣さん出張」の文字が新たに追加されており、語尾から伸びた矢印は結婚記念日をまたいで翌日まで続いている。
 結婚記念日は前々から書いておいたものだが、出張の方は昨日書き足したばかり。見慣れずつい目に留めてしまったのだろう。
 希恵子は恨めしそうに、「出張」の二文字と矢印を睨んだ。
「はあ……」
 右手で左ひじをつかんで、目線を斜め下に逸らしながら、昨日から飽きるほどついたはずのため息をまた一つ吐く。
 最近は、何をしてもこんな調子だった。
 あの夜の誘いを断って以来、和臣との距離もどことなく遠い。気まずくて顔を合わせられず、疲れたとか眠いとか嘘をついて早めに寝てしまうことが多くなっていた。
「どうしたの? 希恵子さん。もしかして、体調でも悪い?」
 鈍いなりに何かを感じ取ったのか、和臣は何度もそう言って希恵子を気遣ってくれた。
 だがそれはありがたい反面、逆効果でもある。
「……ううん、大丈夫」
 夫が見せる裏表のない優しさに毎回同じ作り笑顔でそう返すたび、希恵子の心は岩のようにずっしりと重たくなっていった。


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[ 2018/01/29 11:32 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・58


          *   *   *

 翌日、希恵子は黛から緊急の呼び出しを受けた。
「ふむ、高さはこんなものですかね」
 いつもと変わらぬ、ホテルの一室。
 そのベッドの上では、布団や枕を寄せ集めるようにして作られた小山が、素っ裸でどっかりもたれかかる黛の背を柔らかに支えていた。
「……」
 傍に寄り添っているのは、服をまくり上げられ、ブラをずらされた希恵子。
 ちょうど赤子に母乳を与えるような前屈みの体勢で、黛に乳房をさらけ出している。
「よっと」
 黛の唇が、希恵子の左乳首を迎えに出た。
「んっ、んんっ……」
 ちゅっちゅと音を立てて吸われるうちに、希恵子の口から甘い吐息が漏れ始める。
「で、どうでした? 昨晩、和臣くんとは」
 左胸をむしゃぶり尽くした黛が、飽き足りないように右の乳もぐいと引き寄せた。
「どうってそんな、何もできるわけ……んっ、あ、あぁっ!」
 両乳首をいっぺんに舐め回されると、怒りをぶちまけようとしていたはずの希恵子の声音があっさり艶めかしいものに変貌する。
「ん……ぶじゅっ……ぷはっ。さあ、そちらも」
「は……はい」
 黛が下腹部にあごをしゃくると、希恵子の右腕がおずおずとそちらに伸びた。
「っ……ぅ……」
 熱くて猛々しい剛直を、小さく柔らかな手がゆっくりと上下にしごく。
「おほ、いいですね。この少しがさついた生活感のある感触が、また何とも」
「……」
 相変わらず微妙に無礼な物言いで神経を逆撫でしてくる黛を、希恵子はちらりと一瞥した。
(この、人は……)
 希恵子はもう、全てを悟っていた。
 剃毛した上にキスマークを付けられた理由も、黛と飲むと言っていたはずの和臣が、やけに早い時間に帰宅して突然自分を求めてきた「話の流れ」も。
 何もかも、黛の計算通り。
 そんなもの、全てが屈辱としか言いようがなかった。
 だがそれでも、自分にはこの男の掌で踊り続けるより他に、道はない。
「本当に……酷い、人」
 ぽつりと落とすように呟くと、希恵子は黛のペニスを握る手に少しだけ力をこめる。
「……ふふ」
 細くしなやかな指の感触を存分に味わいながら、黛は口の端を歪め、薄い笑みを浮かべた。


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[ 2018/01/28 11:40 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・57

(ほっ……)
 希恵子は内心、安堵の吐息をついた。
 鈍いといえばその通りだが、和臣のそんな性格が希恵子は好きだし、自分に対し何の疑問もなく安心感を抱いてくれているのが嬉しくもあった。
 それに正直なところ、希恵子からすればその方が都合がいいのだ。
 黛と接することで和臣が日頃の憂さを晴らせるなら、それはそれでよし。
 あとは自分が何食わぬ顔で黛との日々をやり過ごしさえすれば、何の問題もなく事は運ぶ。
「……」
 そこまで考えを進めたところで、希恵子はぐっと胸を詰まらせた。さも当然のように打算的思考を巡らせてしまう己の醜さに、心がチクリと痛む。
「とにかく気分転換になったならよかった。和臣さん、最近少し頑張りすぎのような気がしていたから」
 それでも背に腹は代えられないと、そんなことを言って和臣に笑顔を向けた。
「ん? うーん、そうかな。まあ確かに気分転換っていうことで飲んだんだけど、今日は話の流れでお開きになっちゃったし……」
 だが希恵子の言葉に、和臣は何やらもごもごと語尾を濁すばかり。
「え……そう、なの」
 話の流れとは何だろう。
 そんな疑問がちらりと頭をよぎった希恵子だが、それは口に出さずに、とりあえずの相槌を打つだけに留めた。
「遅くなると思ったから有り合わせのものしかないけど……何か食べる? あ、お茶漬けとかならすぐに――」
「い、いや、いい。いいよ」
 続く希恵子の質問にも、和臣はぎこちなく首を振って答えた。
「きょ、今日は、その、すぐ寝るんだ。うん、寝る」
 そう言って、落ち着かない様子でそわそわと寝室の方を見やる。
 言葉とは反対にあまり眠そうではない和臣だが、希恵子としてもわざわざそれを問い詰める気にはなれない。
「そ、そう……じゃあ、わたしも……」
 首を傾げながらも、結局希恵子は夫に合わせて、早めに就寝の準備を済ませた。

          *   *   *

「希恵子さん……いいかい?」
「!」
「……寝ちゃった?」
「い、いいえ」
「そう、よかった。どうかな……今から」
「ご、ごめんなさい。今日は、その……疲れているから……」
「……そっか」
「ごめん、なさい……」
「いや……いいんだ。仕方ないよ」
「ごめんなさい……本当に」
「いいって。じゃあ……おやすみ、希恵子さん」
「……おやすみなさい……和臣さん」


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[ 2018/01/27 11:19 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・56


          *   *   *

 さほど立地のよくない、どうにかこうにかの1LDK。
 玄関先では、帰宅したばかりの和臣とそれを迎えに出た希恵子が言葉を交わしている。
「今日はもうちょっと残業する予定だったんだけどね。希恵子さんに電話してすぐ、黛さんに誘われてさ」
「へ、へえ」
 黛の名前が出た途端、希恵子が微かに声を震わせた。
 和臣に報告されるまでもなく、希恵子は全てを知っている。
 何しろ、会話の一部始終を聞いていたのだ。黛の熱くたぎった肉棒で、女の秘穴を串刺しにされながら。
 だが今の希恵子にとって、黛はあくまで「和臣との話でしか知らず、会ったこともない人」。決して、それ以上の存在であることを悟られるわけにはいかない。
「そうなんだ……楽しかった?」
 何げなく、話を続ける。
「うん、とても。いやー、でも黛さんは本当に凄い。物知りで、話が面白くて、アドバイスも的確。僕もああいう人になれればなあ……」
「……そう?」
 心底羨ましそうに語る和臣に、希恵子の言葉が若干刺々しくなった。
 あの下劣な男の、どこがそんなに凄いというのか。
 もし自分の大好きな夫が、あんな男のようになってしまったら。
 そんな想像をはたらかせるだけで、希恵子はうんざりした気分と恐ろしさが入り混じった、何ともやり切れない心境になる。
(あ……)
 だが、今の態度はちょっとあからさますぎたかもしれない。
「あ、あの……」
 慌てて和臣の顔色を窺ってみる希恵子だが、夫には何の変化もなかった。
「うーん、そのうち家に招待してみるのもいいかな。でもあのバーだからこそ、お互いうまく話せているのかもしれないし……」
 そんな脳天気な悩みを口にしながら、相変わらず上機嫌に微笑むばかりである。


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[ 2018/01/26 11:28 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)