* * *
翌日、希恵子は黛から緊急の呼び出しを受けた。
「ふむ、高さはこんなものですかね」
いつもと変わらぬ、ホテルの一室。
そのベッドの上では、布団や枕を寄せ集めるようにして作られた小山が、素っ裸でどっかりもたれかかる黛の背を柔らかに支えていた。
「……」
傍に寄り添っているのは、服をまくり上げられ、ブラをずらされた希恵子。
ちょうど赤子に母乳を与えるような前屈みの体勢で、黛に乳房をさらけ出している。
「よっと」
黛の唇が、希恵子の左乳首を迎えに出た。
「んっ、んんっ……」
ちゅっちゅと音を立てて吸われるうちに、希恵子の口から甘い吐息が漏れ始める。
「で、どうでした? 昨晩、和臣くんとは」
左胸をむしゃぶり尽くした黛が、飽き足りないように右の乳もぐいと引き寄せた。
「どうってそんな、何もできるわけ……んっ、あ、あぁっ!」
両乳首をいっぺんに舐め回されると、怒りをぶちまけようとしていたはずの希恵子の声音があっさり艶めかしいものに変貌する。
「ん……ぶじゅっ……ぷはっ。さあ、そちらも」
「は……はい」
黛が下腹部にあごをしゃくると、希恵子の右腕がおずおずとそちらに伸びた。
「っ……ぅ……」
熱くて猛々しい剛直を、小さく柔らかな手がゆっくりと上下にしごく。
「おほ、いいですね。この少しがさついた生活感のある感触が、また何とも」
「……」
相変わらず微妙に無礼な物言いで神経を逆撫でしてくる黛を、希恵子はちらりと一瞥した。
(この、人は……)
希恵子はもう、全てを悟っていた。
剃毛した上にキスマークを付けられた理由も、黛と飲むと言っていたはずの和臣が、やけに早い時間に帰宅して突然自分を求めてきた「話の流れ」も。
何もかも、黛の計算通り。
そんなもの、全てが屈辱としか言いようがなかった。
だがそれでも、自分にはこの男の掌で踊り続けるより他に、道はない。
「本当に……酷い、人」
ぽつりと落とすように呟くと、希恵子は黛のペニスを握る手に少しだけ力をこめる。
「……ふふ」
細くしなやかな指の感触を存分に味わいながら、黛は口の端を歪め、薄い笑みを浮かべた。
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