NTR文芸館

寝取られ・寝取り・寝取らせなどをテーマに官能小説を書いています

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プチNTR10~ある復員兵の夏~

 昭和二十一年、八月。
 長い戦争を経てすっかり変わり果てた大地に、ぎらぎら眩しい夏の陽差しが容赦のない追い討ちをかけていた。
「何て、こった……」
 絞り出すような声で呟きながら、石ころだらけの道をのろのろと、まとわりつく陽炎を押しのけるように歩くのは復員兵、長浜正一(ながはましょういち)。
 上背のある骨太な身体はどうしようもないほどに痩せこけ、全身を包む軍服は見る影もなく薄汚れている。
「っ……」
 歩を進める正一の顔が、苦痛に歪んだ。
 服の下に隠れているのは、手当ても満足になされなかった数ヶ所の怪我。
 ここ数年、状態としてはまさに不潔不衛生の極みであったため、おそらく病気の一つ二つは当たり前に巣食っていることだろう。
 悲惨。
 今の正一の状態を表すのに、どうやらそれ以上の言葉は見つかりそうになかった。
「圭子(けいこ)……隆男(たかお)……」
 正一は無精ひげを揺らすと、かさかさに荒れた唇から呻きのような声を漏らした。
 愛する妻と息子に、生きて再び会いたい。いや、会ってみせる。
 それは正一にとってどんな戦闘よりも、どんな命令よりも大事なことであった。己に課した使命を実現する。ただそのためだけに、正一はあらゆる苦難を乗り越えて、ようやくここまで帰ってきたのだ。
「多分、この辺だと思うんだが……」
 正一は落ち窪んだ目を気怠そうに動かし、周囲を見回した。
 自宅が近いのは大体分かったが、何しろ辺りの景色が一変していて目印になりそうなものがまるで見当たらない。
「あ、あれぇ?」
「え?」
 背後で不意にあがった素っ頓狂な声に、正一は反射的に振り返った。
「もしかして、正一さんじゃないかね? 長浜さんちの」
 丸い目を大きく見開いて正一に語りかけてきたのは、防災服にもんぺ姿の小柄な女性。
「あ……み、三輪さんですか?」
 相手を思い出して、正一の声も少し大きくなった。
 三輪敏江(みわとしえ)。以前ご近所だったおばさんだ。家族ぐるみとまでは言わないが、たまに家に来た時はよく妻の圭子と賑やかなお喋りを楽しんでいた記憶がある。
「あらー、ほんとに正一さんだわー。いやー、驚いたわー。あらー、あらー」
 敏江は正一に近寄ると、本人であることを確かめるように何度もぺたぺたと頬をなでた。
「本当に本物なんだね? 幽霊なんかじゃないんだね? あんたが戦死したっていう知らせが来ていたからさ。何だか信じられなくって……」
「せ、戦死!? 僕がですか!?」
「ああ、そうさ。戦争が終わる一ヶ月くらい前かな。どこだかの海で乗っていた船が沈んだといってね。軍人さんが戦死公報を持ってきていたよ」
「そ、そんな……」
 事実無根の話を淡々と説明する敏江に、正一は瞬きもできないまま言葉を失った。
 だがそれは、有り得ない間違いではなかった。
 敗色濃厚になって現地の破綻が進むうちに、国内へ伝わる情報も錯綜していったのだろう。
 さらに本土のこの壊滅ぶりを考え合わせれば、たかが一兵卒の生死くらい取り違えられても何ら不思議はない。
「そっか、そっか。間違いだったんだね。いや、とにかく、生きててよかったよ。命あっての物種っていうもんね。本当、仏さんにならずに帰ってこれてよかったねえ」
 敏江は気のいい笑みを満面にたたえて、正一の生還を喜ぶように何度も頷いた。
「はい。三輪さんも無事で何よりです。この辺もかなり空襲を受けたようですが……」
「あー、まあね。でも戦地に行った兵隊さんに比べりゃこんなの、どってことないさ。ね?」
 自分も決して楽ではないだろうに、それでもたくましく笑顔の花を咲かせる敏江に、正一も元気づけられてにっこりと微笑みを返した。
「それで、その……圭子と隆男……妻と息子がどうなったか、知りませんか?」
 だが、正一が妻と子供の話を持ちかけた途端、それまで快活だった敏江の顔が急に曇る。
「え? あ、ああ、圭子ちゃんにタカ坊……ね。うん、無事さ。二人とも……無事だよ」
「そ、そうですか。無事ですか。よかった」
 気まずそうに目を逸らして答える敏江をよそに、正一はほっと胸をなで下ろした。
 さっきの敏江の言葉ではないが、命あっての物種。とにかく生きていてさえくれれば、先のことはどうとでもなる。
「あ、あのね、正一さん」
 言い淀んでいた敏江が、覚悟を決めたように正一の目を真っ向から見据えた。
「こんなことを言うのは酷かもしれないけど、あんた、あの二人には会わない方がいいよ」
「……え?」
 思いもよらない敏江の言葉に、正一の視線が不安そうに左右へ散る。
「せっかく無事に帰ってきたっていうのに、あんな――」
「あんな? あんなって何です?」
 正一は敏江に詰め寄って両肩をつかむと、揺さぶるように問いかけた。
「ねえ、三輪さん! 何だっていうんですか? 空襲で大怪我でもしたんですか? それとも病気か何か――い、いや、そんなのは何だって構わないんだ。とにかく二人の居場所を知っているんなら教えてください! どうかお願いします!」
「う、うん……だけど……」
「お願いです、三輪さん! どうかお願いです! この通り!」
「や、やめておくれ。頭を上げておくれよ、正一さん。あたしゃ別にそんなつもりじゃ……」
「だったら!」
 結局、正一はほとんど押し問答のようにして敏江から妻子の居場所を聞き出した。
 そして激昂した非礼を丁重に詫びると、感謝の言葉を残してその場をあとにした。
「……」
 重い身体を引きずりながら、それでも勇んで歩く正一の背を、敏江は無表情に見送った。
「せめて、ちゃんとした形で会えるといいんだけど……」
 心配そうな声で呟くと、未練を断ち切るように踵を返して家路へとつく。
「戦争っていうのは……本当にむごいもんだね」
 口惜しそうに歪んだ敏江の唇から、哀しげな一言がぽつりと漏れた。

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[ 2015/08/19 10:32 ] プチNTR | TB(-) | CM(0)

プチNTR9~あそびにんの存在意義~

 かつてのある日の、子供たち。
「何だよ、このあそびにんって」
「意味ねー。何の役にも立たなそーじゃん」
 部屋の片隅に置かれた古いブラウン管テレビの前で、有線式のコントローラーを一生懸命に操作しながら、彼らの多くはそんな嘲りの言葉を呟いていた。

 ――だが、その実態はといえば――。

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[ 2015/07/01 16:18 ] プチNTR | TB(-) | CM(0)

プチNTR8~キミハ、ココマデ~

 人々が騒がしく行き交い、次々と国際便が飛び立つ、空港。
 出発ゲート周辺には、次便に搭乗予定の客達がぞろぞろと並び始めている。
「じゃあ、行ってくるね。ヒロちゃん」
 少女は、目の前に立つ少年を潤んだ瞳で見上げた。
「ああ、気をつけてな。志保」
 少年は、自分を見つめる少女に精一杯の笑顔を返す。
「……」
「……」
 無言のまま、視線を交わす二人。
『……』
 どちらからともなく、キスをした。
 ひゅー、と冷やかすような声と妙に通りのいい指笛が、フロアの数カ所から聞こえてくる。
 だがそんなものは、両者にとって雑音ですらなかった。
「ん……」
「んん……」
 周囲の音が一切届くことのない二人だけの世界で、少年と少女はいつまでもいつまでも愛を確かめ合った。

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[ 2015/05/15 15:32 ] プチNTR | TB(-) | CM(0)

プチNTR7~夢と現実のはざまで~

 とある社宅の、一室。
 八畳ほどの手狭なリビングでは、二人の男が床に置かれた小さな丸テーブルを挟んでの差し向かいで酒を酌み交わしている。
「ほら、もっと飲めよ」
 スウェット姿の見城哲志(けんじょうてつし)が、眼前の男にビール瓶を突き出した。
「う、うん」
 上着を脱いでネクタイを外したスーツ姿の樋口覚(ひぐちさとる)は、困ったような笑顔を浮かべながら、空のグラスをおずおずと差し出す。
 瓶が傾き、すっかり温くなった黄金色の液体がこぽこぽとグラスを満たした。
「大体なあ」
 覚の顔に人差し指を突きつけながら、哲志がずけずけと語り出す。
「お前は全体に覇気がなさすぎる。行動が足りんのだ、行動が。この前の件だってそうだぞ。〇〇商事とのプロジェクト。あれ、俺が助けてやんなかったら危なかっただろ」
 短めの髪にがっしりした身体つきで、いかにも体育会系といった雰囲気を漂わせる哲志は、口調や声までどことなく筋肉質。
「うん。そうだね。その通りだ」
 一方の覚はといえば、線の細い優男風で、明るい暗いで分けるなら確実に後者という感じの風貌をしていた。
「俺達も今年で入社十年目、いよいよ勝負どころなんだ。これまでは同期のよしみであれこれ面倒見てやったけど、これ以上俺の足を引っ張るようなら本気で見限るぞ、お前のこと」
「はは、それは怖いな」
 尊大な態度で言い放つ哲志に、感情の薄い曖昧な微笑みで応じる覚。そんな二人の様子は、まるでガキ大将とその舎弟のようにも見える。
「ちょっと、哲志」
 台所から出てきて、追加のビールをテーブルに置いたのは、見城の妻、晶葉(あきは)。
 ぴったりしたニットのセーターと細いジーンズが、滑らかな身体の曲線を優雅に際立たせていた。背中まで伸びる栗色混じりの髪は利発な瞳や釣り気味の眉と相性がいい。通った鼻筋や潤いのある唇と相まって、見た目としては可愛いというより正統派美人の佇まいだ。
「もうやめなさいよ。失礼じゃない」
「何だよ、本当のことだろ。俺がいなきゃどうしようもないんだよ、こいつ」
 覚を気遣うようにちらちらと見やりながら夫の袖を引く晶葉だが、酒の力ですっかり饒舌になった哲志に止まる気配はない。
「いいか、樋口。物事は何だってやればできる」
「うん」
「できないのは努力と行動が足りないからだ。信念を持って恐れることなく飛び込めばいい。そうすれば自然と道は開けるんだ」
「うん、うん」
 延々と続く哲志の説教を、覚はただ静かに笑って受け止めるばかりであった。

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[ 2015/04/15 16:22 ] プチNTR | TB(-) | CM(0)

プチNTR6~隣のお姉さんは、誰と~

「あのね、ぼくね、みはるおねーちゃんのこと、だーいすき!」
「ありがとう。お姉ちゃんも隼人くんのこと、大好きだよ」

          *       *       *

「ああ、そう言えば聞いたでしょ? あんたんちのお隣、美晴ちゃんの話」
「はい?」
 それは、菅野隼人(すがのはやと)が高校からの帰り道、三軒隣に住む今井さんという噂話大好きおばさんにつかまり、立ち話の相手をさせられていた時のこと。
「あれよ、あれ。美晴ちゃん、もうすぐ結婚するって」
「は、はい!?」
「あら、知らなかったの?」
「は、はい……その、どういう、ことですか?」
「ええ、それがね――」
 愕然とする隼人をよそに、今井さんは熱のこもった調子でことの経緯を語り始めた。

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[ 2015/02/12 16:22 ] プチNTR | TB(-) | CM(0)