かつてのある日の、子供たち。
「何だよ、このあそびにんって」
「意味ねー。何の役にも立たなそーじゃん」
部屋の片隅に置かれた古いブラウン管テレビの前で、有線式のコントローラーを一生懸命に操作しながら、彼らの多くはそんな嘲りの言葉を呟いていた。
――だが、その実態はといえば――。
* * *
とある街の宿屋、その一室。
男一人と女二人が、何やら真剣な表情で膝詰めの議論を交わしている。
「いやだ」
女戦士のサラが、長い髪を揺らすように首を横に振って言い張った。
「メンバー交換は、したく……ない」
強靭な意志を感じさせる澄んだ瞳と鋭い眼差しによく合った低めの声が、やや薄めの唇からはっきりと吐き出される。装備を解除してゆったりラフな格好をしているが、それでも身体のラインがむちむちと肉感的であるのは一目瞭然であった。
「そーそー。せっかく四人でやって来たんだしさー、このままでいいじゃーん」
軽薄な乗りでサラに同調したのは、小悪魔を思わせる風貌をした女魔法使い、ナナ。
こちらは室内でもばりばりの魔法使いスタイルだが、服の隙間からちらりとのぞく身体にはよくも悪くも無駄な肉が一グラムもついていないようである。
「い、いや、そうは言うがな」
女二人を相手に抗弁を試みるのは、パーティーのリーダーにして勇者様である、ケイ。
鎧を外した身体はそう大柄でもないが、面構えや喋り方からちょっとした所作に至るまで、いかにも「理想に燃える男」を体現したような佇まいをしている。
「初めは頼りなかった俺たちだが、最近は調子よくレベルが上がってきている。今後のもっと大きな冒険に備え、今のうちに人を入れ替えておくことは必要なんじゃないか?」
ケイは朗々と、正確に自分の意見を述べ、サラとナナに問いかけた。
話題の中心はこの場にいない四人目のメンバー、遊び人の男、ユーマ。
ユーマは実戦においてあまり、いや、ほとんどと言っていいほど役に立っていない。
戦闘前にふらっとどこかへ消えてしまうのは日常茶飯事。
いざバトルとなってもモンスター相手に突然タップダンスを踊ってみたり、何の脈絡もなくさえないダジャレをこぼしてみたり、果てはエッチな想像に身を任せながらぼーっとその場に突っ立ってみたりと、奇怪な行動ばかりがやたら目につく男だ。
ケイからすれば、リーダーとして今後の在り方を考えた時、メンバー交代の結論に至るのはごく自然なことに思えた。
サラもナナも、当然自分に賛同してくれるものと信じて疑わなかった。
だが女性陣二人による反対は強固にして、頑迷。
「どうしてもユーマを外すというなら、その……私も、考えなければならなくなる」
「うんうん。ユーマちんはもはやこのパーティーにひ、ひつよーふかけつ? な存在だよー」
そう言ってケイの主張を受け入れないばかりか、
「そもそも君はなぜあの男の、ユーマの価値を認めようとしない。ああいう男にもそれなりの見所はある。君が勇者として自分を高めたいというなら、見えない他人の長所を見出していく努力も必要だと思うぞ。うん、私は、そう……思う」
「そーだそーだー。あんなんでも結構凄いんだぞー、ユーマちんは。あんなんだけどー」
逆に口を揃えてお説教を始める始末である。
「そ、そんな……」
あまりに予想外な反応に言葉を失うケイの後ろで、部屋のドアがばたんと勢いよく開いた。
「ういーす、ただいまー」
軽く右手を挙げ、どことなくふわついた歩き方で入ってきたのは、話題のユーマ。
身長はまあまあ高いが、線は細い。見るからに筋肉量は少なく、いかにも戦闘には不向きといった雰囲気の優男だ。だが、やや癖のある髪に、美男子とまでは言わないがどこか憎めない愛嬌を感じさせる風体には、さすがに人の目を惹きつけるだけの魅力がある。
「いやー、今日はツキがなかった。スロットが全然揃わねーの。なんかもう笑っちゃうくらいばらばらでさ。逆に面白くなってきちゃって、手持ちの金ほぼ全部突っ込んじった」
「なっ、何だって!」
ケイは思わず、声を荒げた。
やはりこの男とは離れるべきだ。ほとんど直感的に、そう思った。
自分たちが必死に戦って稼いだ金をみすみすカジノに捨ててくるなど言語道断。しかもこの遊び人は戦闘中、サラの後ろに隠れておかしなことばかりしているような腰抜けなのだ。
リーダーとして、勇者として、そんな奴に好き勝手されることは、どうにも許しがたい。
憤懣やるかたないといった表情で、ケイはサラとナナを見つめた。
だが、ユーマの所業に対する両者の受け止めはケイのそれとは随分違っているらしく、
「む……そ、それはいかんな。し、しかしまあ、時にはそんな日もあるか」
「そーそー。しょーぶはときのうん、なんて言うしねー」
のんきな調子で気の抜けたような会話を続けるばかりだ。
「っ……」
ケイはまたもや、言葉に詰まる。
愕然と見開かれた双眸に宿るのは、隠し切れない戸惑いの色。
(何でそんなに、こいつを……?)
なおも釈然としない様子でぶすっと黙りこくったまま、ケイは和やかに語り合う自分以外の三人を順に見比べ、それから小さく首を傾げるのであった。
* * *
小さな安宿の、別の一室。
きしむベッドの上では、薄手のバスローブに身を包むサラとナナが、並んで寄り添うような体勢で床を同じくしていた。
「へっへー」
さらには、本来女だけの空間に不思議なほど違和感なく溶け込んでいる男が、一人。
「じゃあ今日も俺が二人まとめて面倒見ちゃうからねー。まずはサラちゃんからー」
そう言ってへらへら笑うと、ユーマはサラの返事を待つまでもなくバスローブを剥ぎ取り、両足首をつかんで顔を近づけた。
「んっ……」
小さな蛇を思わせるユーマの舌がすらりと伸びた二本の脚をかき分け、あっという間にやや濃いめの黒ずんだ茂みへ駆け上がっていく。
「あっ……んぁっ……!」
切なげな声をあげるサラの締まった腿に、早くも熱い蜜がとろりと垂れた。
「おい、ナナ」
「オッケー」
いつの間にか裸になったナナがサラの背後に回り、脇の下からたわわな双乳の先端についた突起をこりこりと弄る。
「あっ! あぅっ!」
「お、いいねー、その表情」
いやらしくにやついた上目遣いで、ユーマがサラの表情をちらりと確認した。
「戦ってる時はあんなにかっこいいサラちゃんがちょっと弄くられただけでもうこれだもん。ほんとそそるわー、このギャップ」
「うんうん、サラちゃんってば、ほんっとかわいいよねー。あっちもこっちもすごくビンカンなんだから、もうー」
「ん、んぁっ、あっ……そこ、はっ……」
サラはユーマの頭を押さえつけながら上半身をよじって二人の責めをかわそうと試みるが、既に身体の力が抜けてしまっているため、抵抗といっても形ばかりにしかならない。
「いやー、しっかし美味いわ、サラちゃんのここ。生々しい臭いがまだほんの少し残ってて、それがまた絶妙にエロい」
ユーマの長い舌が肉びらを押し開き、陰部のさらに奥へと潜り込んでいく。
「んっ!……うぅんっ! いやっ! やめっ……!」
言葉とは裏腹に、サラの色鮮やかな花弁は淫猥な動きでひくひく蠢くばかりだ。
「どーよ、ナナ」
「んー、まあ七分咲きってとこかなー。それにしても相変わらずおっきいねー、これ」
したり顔で頷きながら、ナナは綺麗なおわん型を保ったボリュームたっぷりの肉塊をすくい上げてみせる。
「っ……う……」
振り返り、険しい目つきでナナを睨むサラだが、その頬はすっかり薄桃色に染まっており、表情全体がとろんと上気しているのはもはや隠しようもなかった。
「よし、じゃあ次は四つん這いねー」
サラの身体をごろんと引っくり返して犬のような体勢をとらせると、ユーマは足の隙間からするりと下に潜り込み、ぶらんと垂れ下がった豊乳へと手を伸ばす。
「じゃ、今度はあたしがこっちー」
ナナが細かく足を運んで、すかさず後ろに回った。
「ユーマちん、手コキいる?」
「おう。軽く頼むわ。準備運動程度にな」
「オッケー」
突き出された白尻にねっとりとマーキングを施しながら、ナナはサラの足の間からべろんと飛び出したユーマの肉棒をすこすこ上下にしごき始める。
「お、いい感じいい感じ。サラちゃんのこっちも、もうびんびんだねー」
ぴんと立ち上がった乳首を親指と人差し指でこりこり挟み潰しながら、ユーマがサラを軽く冷やかした。
「い、言うなっ! 大体、これは貴様らが無理やりにっ、ん、んんっ……!」
サラの反論は最後まで言い切られることのないまま、切ない喘ぎへと変わる。
「無理やりって、やだなー、そんな人聞きの悪い」
ユーマは薄笑いを浮かべながら、二つに連なる肉の山を同時にぎゅうっと握りつぶした。
「あ、ああぁっ!」
「サラちゃんだってヒーヒー言って悦んでるじゃん。もう完全に同類だよ、俺らと」
あごを上げ、艶めく黒髪を振り乱すサラに、ユーマはなおも続ける。
「まあ確かに、初めての時はちょっとだけ強引だったかもしれないけどさ。でもあの時だって俺、挿れる前に三回確認したんだよ。『いい? いいね? いいよね?』って」
「う、ぬ……」
サラは返答に窮した。
全てが、ユーマの言う通りだった。
ことが起こったのは、背伸びをして挑んだ凶悪モンスターに見事勝利を収めた後の、夕食。
『こんな私が……戦士として皆のために貢献することができた……パーティーの役に……立つことが、できた……』
大勝利に浮かれてしまい、普段の節度ある飲み方が嘘のように酔ったサラは、そんな言葉をうわ言のように何度も繰り返した。
『あーらら。サラちゃんってば、すっかり酔っ払ってー。どれ、俺が部屋まで運ぶよ』
『あ、だ、だったら俺も……』
『いやいや、ケイくんは結構なけが人なんだから、無理しないで。ここは、どういうわけだか全くもって無傷のこのユーマさまに任せておいてよ。あはは』
『ケイ……ケイには本当に感謝している。踊り子の勧誘を断って、そのせいで孤立して、街でパーティーを組めずにいた私を……熱心に誘ってくれて……だから私は君を大事な……本当に大事な仲間だと……思っていて……』
『はいはい、大丈夫大丈夫。その感謝、しっかりもらっとくよ。まあもっとも、俺、ケイくんじゃないんだけど』
健康すぎるほど健康な素面の男と、はしゃいですっかり酔いつぶれた年若い女。
そんな両者が部屋で二人きりになって、何も起こらないはずがなかった。
「くっ……」
過去を思い出し、恥辱に唇を噛むサラをよそに、
「さて、じゃあぼちぼち挿れてみっか。代われ、ナナ」
ひとしきりサラの両乳を楽しんだユーマがあごをしゃくってナナに促す。
「へいへい。てかユーマちん、たまにはあたしから、とか思わないもんかねー。ま、こっちとしてはサラちゃんを味わうことができればそれでいいんだけどさー」
さばさばと割り切ったように言うと、ナナは素早くユーマと入れ替わって下へと潜り、首をひょいともたげてあっさりサラの唇を奪った。
「ん、んぐっ……」
「ぷっはー。うーん、相変わらずいい味してるなー、サラちゃんの唇」
戦場においては有り得ない光景だが、ここはベッドの上。レベル、経験値、どれをとっても手練なのは明らかにナナの方であった。
そもそも、ユーマとサラの情事を目撃した時も、ナナはまるで動じなかった。
『あー、いーなー、ユーマちん。あたしもサラちゃんほしいなー』
ユーマを非難するどころか、そう言って自分も仲間に入れろと頼み込んでくる始末だった。
『こっ、こらっ……い、今はだめっ、だ……』
『いいじゃん。脱がせたりなんかしないって。それにこの装備の隙間から手を突っ込む感触がまた何とも』
『ばっ、ばかっ……そ、そうじゃなくて……ケイ、ケイに気づかれる、だろっ……!』
『大丈夫。ケイくんの方はナナがちゃんとフォローしてるから』
ナナを味方につけて以降、ユーマは隙を窺っては見境なくサラを弄ぶようになった。
宿屋にダンジョン、そして時にはモンスターとバトルを繰り広げている真っ最中。
何一つ気づかぬまま己のことに集中するケイを尻目に、二人の淫靡な交歓はひっきりなしに続いた。
「ふん、ふふーん」
鼻歌混じりのユーマが、焦らすような動きでサラの入口に亀頭をこすりつける。
「ま、待て」
犬のような格好のまま首だけを後ろに向けたサラが、残りの理性を振り絞るようにユーマを遮った。
「ひ、一つだけ……はっきり、させておきたい……」
「ん? はっきりさせるって、何を?」
ペニスを裂け目に押しつけたまま、ユーマがきょとんと首を傾げる。
「わ、私たちの、関係、だ……こんな、あやふやな状態で、交わるのは、その、もう……」
「ん? あやふやって、何それ……って、あー、そういうことか。はい、はいはい」
もじもじと語るサラの態度から何かを察したように、ユーマが深々と頷いた。
「実はかなり独占欲強いよね、サラちゃんって」
「なっ……」
ユーマの放った一言に、凛々しく整ったサラの顔が羞恥と怒りの朱に染まる。
「俺が街で他の女の子に声かけたら、すっげー怖い目で睨んでくるし」
「そ、それは、貴様があちこちでへらへらと声をかけまくるから……」
「えー、だって情報収集、大事じゃん。特に新しい街ではさっさと人脈作っとかないと。実際そのお陰で先に進めることもたくさんあるわけだし」
「そ、それはそうだが……あんな派手な格好をした若い女ばかり狙って、人脈も何も……」
苦しげに言い返すサラの声音に混ざるのは、消しようのない微かなトゲ。
「うーん。サラちゃん、それはちょっと違うにゃー」
黙々とサラの双乳をねぶり倒していたナナが、ひょいと下から顔を出した。
「せーかくには、派手なカッコの若くてキレイな子ばっか狙って、だよ。ね、ユーマちん」
「はは、まーな」
火に油を注ぐようなナナの言葉をさらりと受け流すと、ユーマは返す刀で屈託のない笑顔をサラへと向ける。
「もっとも、いくら声をかけたってサラちゃん以上の美人なんて出てくるはずないんだけど」
「っ……」
サラの端整な顔が、むずがゆさをこらえるようにぐっといかめしく強張った。
ユーマを責めようとしても、たったこれだけのことであっさり気を削がれてしまう。
このだらしない遊び人の口から吐き出される嘘臭さ全開の見え透いた世辞にも、サラの心はどうしようもないほどに頼りなく、右に左に揺り動かされてしまうのだ。
こんな自分を、ユーマはさぞ扱いやすい相手と思っていることだろう。
笑顔の裏では、ちょろい女、くらいの酷い評価を下しているのかもしれない。
だが、戦場では命取りともいえるそんな見られ方が、サラは決して嫌ではなかった。
戦士としての立場を離れ、一人の女として己のことを見つめ直した時に、心にすっと染みる言葉を贈ってくれるのは、いつだって実直なケイではなく、軽薄なはずのユーマだった。
「うは、きっざー。ユーマちんってば、そんなはずかしーことよく真顔で言えるねー」
「ばーか。これくらいさらっと言えるようでなきゃ、遊び人なんて務まらないんだよ」
ナナに反論すると、ユーマがぎんぎんに屹立した一物をサラの女穴にあてがい直す。
「さて、そんじゃいくよー。はい、サラちゃん、もうちょっとお尻上げてー」
「……」
結局サラは、何一つ断ることができないまま、そっと足を広げて腰を浮かし、ユーマからの挿入を無言で待つしかなかった。
* * *
二人部屋で一人、ベッドに寝転んでいるのは、勇者様、ケイ。
「まったく……」
ずっと空っぽな隣のベッドを見やり、ため息をついた。
ユーマはいつでもこんな調子で、ほとんど部屋にいることがない。大方よからぬ遊びにでものめり込み、時間を浪費しているのだろう。街で宿を取ればたいていは朝帰りだ。
「やっぱり……」
サラにもう一度掛け合ってみようか。
ケイは一度立ち上がりかけ、少し迷ってから、やがて諦めたように再び身体を横たえる。
これ以上は、いくら言ってもだめな気がした。
『私は熱心な男は嫌いじゃないが、しつこい男は嫌いだ』
以前何かの折に、サラがそんなことを言っていた記憶がある。
「本当、分からないな」
呟くケイの脳裏に、戦闘中のサラが見せる勇ましくも美しい表情が浮かんだ。
特に印象に残っているのは、凶悪モンスターを倒したあの奇跡のような瞬間の、笑顔。
獅子奮迅ともいえるサラの活躍にはもちろん凄まじいものがあったが、あの時はケイ自身もとてもいい闘いができたと自負している。
何より嬉しかったのは、戦いを通してサラとの関係を一段先に進められたこと。
モンスター撃破という結果もさることながら、あの苦境を乗り越えたことで、自分とサラの間に見えない絆ができたような気がした。
「もっとも……」
ケイは苦笑する。
その後の夕食で酔いつぶれた彼女を支えられなかった自分に対しては、情けないの一言。
戦闘力はともかく、男としてはまだまだ修行不足というのが今の自分の実情なのだ。
「でも、いつか――」
気を取り直して、ケイは前を見据える。
思い返すのはあの日、心に決めたこと。
勇者として大きな仕事を、自分で自分を認めてやれるだけの何かを成し遂げた時に、堂々と胸を張って想いを伝える。それを実現するまでは弱音も恋心も胸の奥にしまっておこう。まず自分自身を鍛え、もっともっと強くなること。全ての話は、それからだ。
「……よし」
決意を新たにすると、ケイは頭から布団をかぶってぎゅっと固く目を閉じ、そのまま静かに眠りについた。
* * *
「ふっ、ふっ、ふっ、ふんっ!」
「んっ、んあっ、あっ、あぁぁっ!」
責めるユーマに喘ぐサラ。二人の嬌声が艶めかしい息遣いとともに狭い部屋を満たす。
「ふぅ……と」
少しペースを落とし、スープでも混ぜるような動きでサラの中をゆっくりかき回した。
「おー、うまい」
ユーマの手が回らないところをあちこち舌と指で愛撫しながら、ナナが口を挟む。
「ちんこもそーだけどさー、ユーマちんはテクニックも悪くないよねー。かんきゅーだとか、女の子のツボをちゃんと心得てる感じ。ほんと、男にしとくのもったいないよー」
「ふふん。言ったろ。遊び人の称号は伊達じゃないんだ」
さらに自在の抽送を繰り出しながら、ユーマが自慢げに応じた。
「でもほんと、分かんないもんだよなー」
首を傾げながら、話の矛先をサラへ向ける。
「サラちゃんって普段はキリッとしてるし、戦ってる時なんかもう超絶かっこいーのにさー、ベッドの上だとこんなにあっさり陥落してヒーヒー喘ぎまくっちゃうんだもん」
「そ、それは、その……」
まだまだ修行が足りないからだ、と続けようとしたが、サラはすぐに口をつぐんだ。一人の女の子の物言いとして、それはあまりに武骨すぎる気がした。
「貴様が……貴様のやり方が、しつこすぎる……だけだ」
結局選んだのは、相手に全てをなすりつけてしまう、誇り高き戦士にはあるまじき言葉。
「ふーん。俺のせいなんだ」
ユーマは怒るでも笑うでもなくただそれだけ呟くと、腰を曲げてサラの背中に乗り、耳元にそっと唇を寄せる。
「じゃあさ、ケイくんにばらしちゃう?」
「!」
サラの顔色が、瞬時に変わった。
「しつこい男、嫌いなんでしょ? サラちゃん。だったらさ、何もかも洗いざらいぶちまけて俺をパーティーから追い出せばいいじゃない。きっと凄く喜んでくれると思うよ、彼」
「うーわ。ユーマちん、いじわるー。てか、やっぱ分かってたんだー、ケイちんの気持ち」
サラの下から顔をのぞかせたナナが、いたずらっぽく笑う。
「は。んなもん、あんだけことあるごとに睨まれりゃアホでも分かるっつーの」
鼻でせせら笑うようなユーマの声が、その上にぽんと放り出された。
「ま、どんだけ嫌がられても俺はこのパーティー、離れるつもりはないけどね。最初は戦ってばかりでつまんなかったけど、最近は自由にやれて楽しくなってきたし、何よりサラちゃんともっと一緒にエッチなことしたいし」
射精前の火照りを一旦鎮めるようにピストンを減速させると、ユーマは突き出されたサラの尻を痴漢でもするようにすりすりと撫で回した。
「まあ、サラちゃんがどうしても言うってんなら仕方ないけどさー、ケイくんに話せる? 今こうして俺らがやってること、包み隠さず」
突き込む動きに、少しずつ力強さが戻ってくる。
「う、うぅんっ!」
感じやすいスポットを的確に突かれ、サラの穴が肉棒を咥え込むようにきゅっと締まった。
「言えないよねー。てか、言えるわけないよねー」
ユーマが余裕綽々に、だって、と言葉をつなげる。
「いくら正直者のサラちゃんでもさ、君よりもユーマが、ユーマのアレが好きなんだ、とか、さすがに酷すぎるもんねー」
「んっ! んぁあっ!」
猛る剛直で膣内を念入りにこすられ、サラのヴァギナから噴き出すように蜜汁がこぼれた。
「でもさー、本心を偽り続けるのってよくないと思うんだ。俺としては」
「んっ……んぁっ……あっ、あぁんっ……!」
「ほら、アンアンじゃなくてさ、言ってみてよ、サラちゃんの本心。何が好きなの? ん?」
もはや言葉を返すこともままならないサラを、ユーマは後ろから執拗に貫き続ける。
「ほら、言ってみなよ。ん? ほれ、ほれ、ほれ、ほれ、ほれ」
「んっ……んんっ、あっ……き、貴様の、アレ、が……」
「え? なーにー? 聞こえなーい」
わざとらしいユーマの反応に、サラは悔しそうな顔でぎゅっと唇を噛んだ。
「も、もう……離れられないんだ……貴様の、アレが……忘れられないんだ……」
「アレって何さ? はっきり言ってくんなきゃ分かんないよ。ほら、ほら、ほら」
「貴様のオチンチンの感触を、身体がすっかり覚えてしまった。今、こうされているだけでも全身がしびれるように疼いて……止まらないんだ!」
「……へへ」
サラにそこまではっきり言わせたところで、ユーマは唇の端を釣り上げ、勝ち誇ったように笑った。
「あらー。ケイちんってばかわいそー。あんなに一生懸命、まーっすぐに想ってるのにねー、サラちゃんのこと」
サラの頬にキスを繰り返しながら自分の割れ目を弄っていたナナが、同情心のかけらもない口ぶりで肩をすくめる。
「っ……!」
ナナの言葉を耳にして、サラの口がまた申し訳なさそうに固く結ばれた。
「はい、よく言えましたー。じゃあそんな正直者のサラちゃんには、ごほうびとして正面からがっちり抱き合った形でオチンチンをプレゼントしてあげましょーう」
ユーマは挿入を外さないように注意しながらサラを仰向けに回転させると、身体をぴったり密着させ、真上から組み伏せるようにがっちりと押さえ込む。
「じゃあ、今日は記念ってことで、いよいよ中出し解禁、いっちゃおっかなー」
「い、いや。それは、まずい。もし妊娠してしまったら……」
狼狽したサラが、慌ててユーマを止めた。
「大丈夫大丈夫。だろ? ナナ」
「はーい。だいじょぶでーす」
軽く尋ねたユーマに、一旦ベッドを下りたナナがこれまた脳天気な調子でぴょこんと右手を挙げて応える。
「このナナ、先日ついに不妊魔法を習得、使いこなせるようになったのでありまーす!」
「ふ、不妊魔法!? 何だそれは!」
全くの初耳だったのだろう、サラは目を丸くして聞き返した。
「何だって言われても、名前のとーりだよ。エッチの後七十二時間以内にこの魔法をかければ絶対に、確実に、避妊をすることができるのでーす!」
「なっ……そんな……魔法が……」
説明を聞いてもなお唖然としているサラに、ナナがにこにこと続ける。
「いやー、媚薬魔法とどっちにするかちょーっと迷ったんだけどねー。サラちゃんてそんなのなくてもすっごい感度いいから、とりあえず必要になりそうなのはこっちかなーって」
「おお、いい判断だ。さすが自称『サラちゃんのカラダを一番分かってる女』」
薄笑いのユーマが、おだて口調でナナを持ち上げた。
「へへーん、まーねー。この魔法って一般には秘密だからあまりおおっぴらにできないけど、昔から魔法使いの間ではよく使われてるんだー。じゅよーときょーきゅーのばらんす? ってやつで」
「ひ、秘密って、そんな魔法を私にかけようというのか!?」
「ああ、大丈夫大丈夫」
気色ばんで問い質すサラに、ナナに代わってひらひらと手を振り応じたのは、ユーマ。
「聞いた話だと身体への副作用とか、そういった害は一切ないんだってさ、この魔法。効果も一時的だから、後でちゃんと子供を作ることだってできるし」
「……本当か?」
「あれ? 俺が今まで嘘言ったことあった?」
「それは……たくさんあるだろう」
「はは、まーねー。でも、許してくれるでしょ? サラちゃん、何だかんだ言って優しいし。それに……」
ユーマはサラの中で、いきり立つ自らの一物をくいくい持ち上げてみせる。
「俺の精子、もう待ちきれないくらいとろとろになってるみたいだし」
「……」
その指摘に、サラが反論することはなかった。
潤んだ瞳に紅潮した頬、どこかぼーっとした顔つきがその心情が雄弁に語っていることは、誰の目にも明白であった。
「……本当に、本当なんだろうな? ナナ」
最後の最後に残ったひとかけらの理性を駆使して、サラがナナを問い詰める。
「ほんとでーす。現役ばりばりの魔法使いが保証しちゃいまーす。いぇーい」
ナナはぐっと親指を立てると、どこまでものんきに、朗らかな声でそう請け合った。
「そ、そう、か……」
うつむきがちにぽつりと呟いたサラの口から、だったら、の一言がこぼれる。
おずおずと両足を動かしたかと思うと、絡めるようにユーマの背中に回して、腰のあたりを締めつけるようにがっちりとホールドした。
「お。サラちゃん、いよいよやる気じゃん。へへ、そのままちゃーんと固めといてね」
にんまり満足げな笑みを浮かべると、ユーマはサラを押さえ込んだまま腰を動かし始める。
「うら、うら、うらあっ!」
初め緩やかだった抽送は、すぐに身体全体でのしかかり、上からがんがん突き下ろしていく激しいピストンへと加速していった。
「んっ! あっ! あぁっ! あぁん!」
普段の落ち着いた声とも、戦闘時の低く厳しい声とも異なる甲高いサラの嬌声が、狭い部屋全体を跳ね回るように響く。
そして、ほどなく。
「そら……よっと!」
「あっ……うぅんっ!」
がっちりと抱き合ったままの二人が、タイミングを同じくして身体の動きを止めた。
それは、両者の意識を飛ばすほどの、猛烈な絶頂。
ユーマにも、そしてサラにとっても、代えがたい至福の、時。
「っ……ぅ……」
「ふー、出た出た」
ひくひくと小刻みに身体を震わせてベッドに四肢を投げ出すサラを見つめながら、ユーマは満ち足りた様子で深く息を吐いて笑う。
「このたっぷり出した後に襲ってくる何とも言えない変な感じがまたいいんだよなー。ほんとクセになるわ、これ」
「あー、はいはい。そりゃーよござんしたねー」
多幸感と虚脱感がないまぜになった事後の感覚をたっぷり満喫するユーマに、ナナは苦笑を浮かべながらそんな声をかけた。
* * *
ブラウン管テレビの前には、子供たち。
「やっぱ分かんねーよ、あそびにん。何のためにいるんだよ」
「あ、そうだ。こいつ、確か――」
――あそびにんはある一定のレベルに達すれば、簡単に『賢者』となる――。
※おまけストーリー『あそびにんの存在意義 ――Beyond――』はこちらから!
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