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プチNTR6~隣のお姉さんは、誰と~

「あのね、ぼくね、みはるおねーちゃんのこと、だーいすき!」
「ありがとう。お姉ちゃんも隼人くんのこと、大好きだよ」

          *       *       *

「ああ、そう言えば聞いたでしょ? あんたんちのお隣、美晴ちゃんの話」
「はい?」
 それは、菅野隼人(すがのはやと)が高校からの帰り道、三軒隣に住む今井さんという噂話大好きおばさんにつかまり、立ち話の相手をさせられていた時のこと。
「あれよ、あれ。美晴ちゃん、もうすぐ結婚するって」
「は、はい!?」
「あら、知らなかったの?」
「は、はい……その、どういう、ことですか?」
「ええ、それがね――」
 愕然とする隼人をよそに、今井さんは熱のこもった調子でことの経緯を語り始めた。

 伊原美晴(いはらみはる)の父親、憲夫(のりお)は、妻の麻純(ますみ)とともに小さな工場を経営しているが、その台所事情はここ数年の間ずっと火の車であった。
『町工場発のイノベーションで大逆転! 赤字続きから一躍、世界企業へ!』
 そんな甘い夢を見られるのは、ほんのひと握りの中の、さらに僅かなひとつまみ。
 零細企業の現実など実際はどこまでいっても汲々としたもので、資金繰りに苦労した挙句、給料の遅配を招くことなどざらであった。
「どうってことないですよ、これくらい。俺達は憲夫社長と麻純さんのいるこの工場で働いていてえんだ。昔も今も、そしてこれからもずっとね」
 古株の社員達がそう言って快く我慢を引き受け、彼らを慕う若い連中もそれに倣ってくれたおかげでどうにか自転車操業を続けてこれたが、それも限界。いよいよ決断の時を迎えた。
「どうかね、伊原さん。例の話、考えてくれたかね」
 そんな憲夫の元に現れたのが、岩倉幹三郎(いわくらみきさぶろう)。
 何でも工場の経営が徐々に悪化し始めた五、六年前から、ずっと憲夫に身売りを持ちかけていたのだという。
 岩倉は当座の運営資金を融資するのに加えて、今後に向けての投資ということで設備の買い替えやバージョンアップなどをまとめて行うという好条件を提示していた。
 それでも憲夫が話に応じなかったのは、そもそも裏から手を回して自分達を追い詰めたのがこの岩倉だという疑いを捨てきれなかったため。
 だが、金がないのは首がないのと同じ。とうとう憲夫は岩倉の提案を受けることに決めた。
 圧倒的に不利な立場だった憲夫だが、それでもできる限り交渉を続け、さらなる譲歩を引き出すことに成功。社員の待遇改善と雇用の確保に加え、岩倉を名目のみの社長として現場は新たに副社長となる自分と麻純が取り仕切ることを承諾させた。
「やれやれ、これで商談成立ですな。いや、めでたいめでたい。時に伊原さん、その代わりと言ってはなんだが、一つワシの頼みを聞いてはもらえませんか」
 話がまとまったところで、岩倉がある要求を突きつけてきた。
「あー、お宅の娘さん、美晴さんといいましたかな。ぜひワシの妻に迎えたいのですが」
『……は?』
 申し出を耳にすると同時に、憲夫と麻純は夫婦で見事に声をシンクロさせた。
 美晴は二十二歳。ふんわりと、いかにも母性的な雰囲気を醸し出す美人で、長めに伸ばしたやや癖のある黒髪が穏和な顔立ちとよくマッチしている。いつも笑顔を絶やさぬ明るい性格でご近所でも評判の娘だ。子供好きで、大学を卒業した後は保育士を目指すと現在勉強を重ねている最中である。
 一方岩倉はといえば、五十も半ばを迎える油ぎったバツ三の中年男。若い頃は貧乏だったが事業で一山当てて以来、すっかり成金趣味が板についている。チビ、デブ、すだれ頭の見事な三拍子にマンドリルが人間に化けたような顔つきは、他人を見下す尊大な物言いと合わさって品性下劣なおっさんのモデルケースを連想させた。
「ワシとしては大損を覚悟でそちらの出した条件をほぼ丸呑みしたんだ。これくらいの願いは聞いてくれてもいいでしょう。ここはどうか、誠意ってもんを見せてくださいや」
『……』
 憲夫と麻純からすれば、美晴は厳しい暮らしの中切り詰めて切り詰めて、ようやくここまで育て上げた大事な一人娘。そうおいそれと嫁になど出せるはずもない。
 それでも、一応は娘への正式な求婚を、親として無下にするわけにはいかなかった。
「……失礼ですが、娘のどこを好いてくださったのでしょうか」
「あー、やはりあの乳、それに尻ですな。どちらもぶるんとでかいが、それでいてスタイルが崩れてないというのが実に素晴らしい。もうね、見てるだけでこれもんですわ」
 尋ねた憲夫に、岩倉は股間に当てた拳をぐいと持ち上げながらそう力説した。
「そういう面じゃなくて、性格とかの話なんですけど」
「あー、性格。そうですなー、やはりワシに対して一途に、従順な奉仕を捧げてくれることが一番ですかな。ワシは生意気な女というのは好かんのですよ。何事も控えめに、いつも主人を立てる。美晴さんにはこういった妻のあるべき姿というのがぴったり、似合っとりますな」
「そんな要求をするからには、夫のあなたもちゃんと一途に娘を愛してくれるんでしょうね?」
「あー、まあできるだけそうしたいとは思いますがね。何ぶんこういうのは男の甲斐性というものですし、多少のことはどうぞ大目に見てやってくだせい」
「そ、そんな都合のいい……」
「言ったでしょ。女は従順が一番。甲斐性なんぞ要りませんが、男はそうもいかんのです」
 憲夫を押しのけるように前に出てきた麻純の厳しい詰問にも、岩倉はしゃあしゃあと勝手な本音を吐露。夫婦二人を完全に絶句させてしまった。
「少し、考えさせてください。娘の気持ちもあることですし……」
 とりあえずそう言い逃れて、憲夫は岩倉にしばらくの猶予を請うた。
「私は反対です」
 麻純の意見は明快。
「それはそうだが……俺達を慕ってついてきてくれた連中を見殺しにはできんし……」
 対する憲夫は、どうにも煮え切らなかった。
「社員のみんなが大事なのは私も同じですけどね、だからといって自分の娘をエサにする親がどこにいるんですか」
「う、うん……でも、あんないい条件を呑んでくれる人、もう他には……」
「これは条件がいいとかお金がどうだとか、そういう問題じゃないんです。大事な娘の一生の問題なんですよ。美晴があんな男に嫁ぐなんて、考えただけでも鳥肌が立ちます」
「そうだな……うん。そう、だよな……」
 麻純の剣幕に押されて、憲夫も一旦は腹を決めた。
 岩倉の話を断り、工場はたたむ。社員達には申し訳ないが、家を売ってできるだけの補償をしよう。美晴の学費は払い終えているので、あとはどうにか保育士の試験に受かって自立してくれればそれでいい。自分達夫婦は安いアパートにでも引っ越して、また一からやり直しだ。
 それで、話は決まったかのように思われた。
 だがそれを引っくり返したのは、当事者である美晴本人。
「お父さん、お母さん。私、岩倉さんのお嫁さんになるから」
 大好きな両親によくしてくれた社員達、そして愛着のある工場を思いやった末、美晴はそう言って自ら結婚を申し出た。
「お、お前、そんな……」
「そうよ。そんなとんでもないこと言わないで」
「もう決めちゃった。岩倉さんの方にも直接伝えたから、今さら取り消すことはできないよ。大丈夫、私ああいう人結構タイプだし、うまくやっていけると思うから心配しないで」
 憲夫と麻純にそう笑いかけ、優しい嘘をついてみせた美晴の表情は、いつもと何も変わらぬ穏やかで、柔和なものであった。

「あんないい子がねー。ほんと今の世の中、世知辛いというか何というか――」
「す、すいません! 俺、帰ります!」
 なおも話を止める様子のない今井さんに頭を下げて、隼人が走り出した。
「か、母さん!」
 血相を変えて飛び込んだのは、自宅の狭い台所。
「何だよ、美晴姉ちゃんが結婚するって! どういうことだよ!」
 まくしたてながら、洗い物をする母の孝枝(たかえ)に詰め寄る。
「……あんた、それどこで聞いたの?」
 水を止め、手を拭いてから、孝枝が隼人を見据えた。
「三軒隣の今井さんだよ! さっき帰り道にばったり会って、立ち話で!」
「あー……」
 孝枝はしまったという顔で天を仰いだ。
「何で教えてくれなかったんだよ! そんな大事なこと!」
「言われてたんだよ、美晴ちゃんから。あんたにだけは教えないでくれって」
 大声でわめき散らす隼人に、孝枝は渋々口を割った。
「そ、そんな……」
「あんたを傷つけまいと思ったんだよ。あの子は昔っから気の優しい子だからね。それくらい分かってやんな」
 呆然と立ち尽くす隼人に、孝枝は厳しい口調で懇々と説く。
「それに、あたしらにはどうすることもできないんだよ。いくらお隣同士で長年仲よくさせてもらったといっても、所詮は他人。立ち入ったことに口を挟める立場じゃないんだ」
「う……」
 隼人は一言そう呻いたきり、黙りこくってしまった。
 確かに、母の言う通りなのだろう。
 自分は家族でも何でもない、単なる幼なじみのお隣さん。
 余計なことを言える立場にないというのは、揺るぎのない事実であった。
 ――だが、しかし。
 母の意見は正論だが、所詮それだけでしかない。
 美晴がおそらく、いや確実に意に沿わぬ形での結婚を強いられようとしている。
 その事実には、隼人の心を千々にかき乱し、理屈を超えた衝動を胸の奥から呼び起こすのに十分といえるだけの重みがあった。
(美晴、姉ちゃん……)
 隼人の脳裏にぼんやりと、美晴の優しい笑顔が浮かぶ。
 ほんの小さな赤ん坊の頃からまるで実の弟のように自分のことを可愛がり、よく面倒を見てくれたお姉さん。
 それが、五歳年上の伊原美晴だった。
 隼人は今十七歳だが、美晴との付き合いはそのまま年齢分。
 隣の家で、部屋も同じ二階。窓が向き合っていて距離も近いため、毎日そこにへばりついて他愛もない話をした。飛び移ることも可能だったので、親に秘密で何かする時はよくその手を使ったものだ。
 そんな隼人が美晴と距離を置いたのは、小学校高学年から中二くらいまでの一時期。
「何だよ、見んなよ」
 この年頃の照れと苛立ちを、そのまま美晴にぶつけてしまうこともしばしばだった。
「うふふ。もう、隼人くんってば、可愛いんだから」
 だが美晴は、ピリピリする隼人を母親のような、いやあるいはそれ以上の温かさで見守り、包み込んでくれた。
(俺、やっぱり美晴姉ちゃんのことが……)
 美晴への気持ちを隼人がはっきり自覚したのは、高校に入学する直前のこと。
 いつの日か、自分の力で美晴を支えたい。
 この頃には、隼人も素直にそう思うことができるようになっていた。
 だが今の隼人は、何の力もないただの高校生。簡単に告白など、できるはずもない。
「焦ることないよ。ゆっくり行こうね、隼人くん」
 美晴は隼人の思いに気づいているようだが、あえて知らないふりをしているのか、のんびりそんなことを言ってはにこにこと笑うばかりだった。
 俺のことを、待ってくれている。
 隼人は、そう考えていた。
 長年の付き合いから、それが決してうぬぼれや勘違いではないという自信もあった。
 いつになるかは、分からない。
 だが、自分と美晴には、確かに約束された未来がある。
 そう信じて、隼人は美晴と釣り合う男になるために日々を費やしてきたのだ。
 その美晴が、突然どこの誰とも知らない中年のおっさんと結婚するという。
(そういえば……)
 さっき、お隣の玄関前に見たことのない黒塗りの高級車が停められていた。
 もしかしたら、あれが――。
「……くそっ!」
 隼人が階段を駆け上がって、二階の自室に転がり込んだ。
 窓を開ける。
 六月の爽やかな風が吹き込んだ。
 向かいの窓も開いている。
 カーテンがたなびいて、中が見えた。
 久しく入っていないが、そこはいつも通り、見慣れた美晴の部屋だった。
「ひひ、うっひひ」
「い、いやあぁっ!」
 ただ一つ、醜いおっさんが美晴をベッドの上に押し倒している点を除けば。
「!!」
 隼人は反射的に身を伏せ、窓の下の壁にへばりついた。それからこっそり、目から上だけを浮上させ、食い入るように隣の様子を見つめる。
 美晴のベッドは窓と並行するように置かれているため、アングルは横からだった。
 風に揺られたせいか、カーテンは位置がずれてあまり用をなしていない。元々の距離が近いため、互いに窓の開いたこの状態なら会話は完全に丸聞こえだ。
「ひっひ。どうせお前はワシに逆らえんのだ。いいか、これから徹底的にかわいがってやる。ワシ好みのいやらしいメス豚になるまでとことん仕込んでやるからな。覚悟しておけ」
(なっ……!)
 隼人の耳にいきなり飛び込んできたのは、中年オヤジのおぞましいだみ声。
「おお、おお。みっちり肉の詰まったいい脚をしているな。どれ」
 唾液をたっぷり含んだ口を半開きにしながら、岩倉が美晴の長いスカートに潜り込んだ。
「ひっひ、絶景絶景。まあ本当なら十代の方がいいんだがな。二十歳を過ぎるととうが立って少し味が落ちる。だから何年も前から声をかけておったのに、あのぼんくらめが、生意気にもこのワシ相手に出し惜しみなんぞしおって」
 くんくんと鼻を鳴らし、匂いをかぐ。
「でもまあ、これくらいならいい線だろ」
 深呼吸を何度も繰り返した。
「ん……あっ」
 秘部に生温い風が当たるたび、美晴がくすぐったそうにもじもじと身体をよじる。
「ふんっ」
 岩倉がすだれ頭をさらに奥へ押し込み、ぶじゅぶじゅと気色の悪い音を立てて下着の上から美晴の陰部を舐め回した。
「ひっ……ひぃっ!」
 身震いする、美晴。
「ほれ、せっかくムチムチの太股をしとるんだから、ちゃんと顔を挟めい」
「は……はい……」
「弱い! もっとしっかり押し潰せ!」
「は、はい!」
「うーっ、んふふ、むぅおふううう」
 どうやら素晴らしく気持ちがいいらしく、岩倉が得体の知れない獣のような奇声を発した。ちゅっちゅちゅっちゅと太股に吸い付く音がやたら大きく、耳障りに響く。
「きひひ、盛り上がってまいりました、と」
 スカートから頭を抜くと、岩倉は美晴を組み伏せるように上から覆いかぶさった。
「い、いやっ! いやぁっ!」
 もがく美晴のスカートをずり下ろし、薄手のシャツをびりびり引き裂くと、荒っぽい動きでブラジャーとパンティーをあっという間に剥ぎ取ってみせる。
「おお、おお。この乳、この尻。こいつはなかなか縛りがいがありそうだわい。縄をぎっちり食い込ませて大股開きで天井から吊るしてやれば、さぞいい眺めになるだろうて」
 嬉々とした表情でそう言い放つと、美晴の腰回りや腹などをすりすりと撫で回した。
「おお、肌のキメも細かくていいのう。ムチやら竹刀やらで思いっきりひっぱたいてやるのが今から楽しみだ。ロウソク、首輪、水責め、三角木馬、浣腸。ワシ自慢の地下室で全部試してやるからな。期待しておけ。うひ、ひっひ」
 今後の調教プランを披瀝すると、口元を歪め、舌なめずりをしながらにたりと笑う。
「う、うぅっ……」
「おお、いい顔だいい顔だ。やはり女はこうでなきゃいかん」
 恐怖に強張る美晴の顔を満足そうに一つねめつけると、
「さて、このままただ犯るのもつまらんな。何か使えそうなものはないか」
 岩倉はぐるりと部屋を見回し、隅に置かれた大型の衣装ケースに近づいた。
「どれどれ……ん?」
 泥棒のように中身を物色して引っ張り出したのは、可愛い装飾のほどこされた小さな箱。
「何だ、これは?」
「そ、それは、その……」
 問う岩倉に、美晴が言い淀んだ。
「んあ?」
 つかつか歩み寄ると、岩倉は美晴の頬にぱんと一発平手打ちを浴びせる。
「聞かれたことにはさっさと答えろ! ワシを苛つかせるな!」
「す、すいません……た、宝物を入れる箱です。昔と、今の」
 張られた頬を押さえながら、美晴がたどたどしい調子で答えた。
「ふん、だったら最初っからそう言えというんだ。そうか、宝箱か。それは暴きがいがあっていいな。ひっひ」
 機嫌を直した岩倉が、ぞんざいな手つきで蓋を開け、ごそごそと中を漁る。
「お?」
 何か紐状のものをつかんだかと思うと、釣りでもするようにひょいと腕を上げた。
(あっ!)
 瞬間、隼人の顔色が変わる。
 出てきたのは、一本の黄色いリボン。
 高校に入学していよいよ自分の気持ちが明確になった隼人が、勇気を出して誕生日に贈ったプレゼントだ。陽だまりのような美晴の雰囲気にぴったりで、我ながらいいチョイスだったと密かな自負を抱いている。
「あ、そ、それは! それだけは触らないでください!」
 美晴が岩倉に詰め寄った。
「あぁ!? 何だと!? もういっぺん言ってみろ!」
「きゃっ!」
 激昂した岩倉が、リボンと一緒に美晴をベッドへ突き飛ばす。
「わしは従順な女が好きだと言うとろうが! 従順な女というのは、主人に向かって偉そうにそれだけは触るな、などと命令する女のことではないわい!」
「で、でも……」
「黙れ! 女風情がワシに逆らうことは許さん! 今からお前の身体にその教えをきっちりと叩き込んでくれるわ!」
 美晴の反論を力で封じ込めると、岩倉は宝箱を乱暴にほじくり、いくつか道具を選び出してベッドの上に放り捨てた。
「ほれ、後ろを向け」
 美晴の頭をつかんで首をひねると、
「むんっ」
「あうっ!」
 背中を蹴ってうつ伏せに転がし、ビニール製のロープで手を後ろに縛る。
(あ、あれは……)
 隼人の脳裏に、昔の思い出が蘇った。
『いーち、にー、さーん……』
 ほんの小さな頃に、二人で向かい合って飛んだ、縄跳び。何度も引っかかる隼人に、美晴は優しく微笑みながらタイミングを取るコツを教えてくれたものだ。
「ビニールはふんじばっても食い込みが悪くて興をそぐんだがな。跳び縄というならちゃんと縄を使えというんだ、全く……よっと」
 ぶつぶつぼやきながら美晴を引っ立てると、岩倉は次の道具を手に取った。
(あ……)
 それもまた、隼人にはよく見覚えがある、一品。
 恐竜の形をした、三色セットのマグネット付きクリップだった。小学一年生の時に、初めてもらったお小遣いを躊躇なくはたいて購入、美晴のお誕生会で渡した記憶がある。
「しっかり挟めるし、サイズもちょうどいいんだよ」
 美晴はそう言って今もこのクリップを重宝に使ってくれており、先日窓越しに見せてくれた時には保育士の試験に関する大事な書類が挟まれていた。
「ひっひ、こいつはよく噛みつきそうだのお」
 岩倉は、未使用のまま大事にしまわれていた残り二つのクリップを両手に持つと、挟み口をかちかち鳴らしながら美晴の乳首に向けた。
「ほぉれっ」
「ひ、ひぃっ! 痛いぃっ!」
 敏感な肉粒を潰された美晴が、痛みに悶えながらぶんぶんと首を横に振る。
「おお、いい声で鳴きよるな。だが、まだまだ」
 岩倉がさらにベッドへ手を伸ばした。
(あ、ああ……)
 隼人が、わなわなと唇を震わせる。
 今度はネックレスだった。三センチほどある色とりどりのプラスチック球が、安っぽい紐に通されて等間隔にずらりと並んでいる。美晴にあげたのは確か小学四年生の時。恥ずかしいと思いながらもまだ避けるには至らない、そんな時期のことであった。
「ふん、まあこれでいいか」
 岩倉が手近にあったハンドクリームを、球の部分にぐりぐりと塗ったくった。
「ガキのおもちゃが大人のおもちゃに早変わりってとこだな。きっひひ」
 下卑た声で笑うと、美晴の右腰に左腕を回して腰を持ち上げ、脇に抱えるような体勢で尻を顔の前に運ぶ。
「え? あ、や、やぁっ!」
 何をされるか察した美晴が、悲痛な叫び声をあげた。
「どーれ」
 岩倉が右手に持ったネックレスの球を一つずつ、美晴の尻穴へと押し込んでいく。
「んっ! い、痛い! いや! いやあぁっ!」
「おお、そうか。痛いか。ならもっとぶち込んでやろう。ほれ!」
 手足をばたつかせる美晴を抑えつけると、岩倉はさらに球をねじ込み、ぐりぐり肛門を拡張してみせた。
「ひいっ! ひいいぃぃっ!」
「おうおう、本当にいい鳴き声じゃな。そそるそそる……よし、まあこんなもんか」
 美晴の喚き声に興奮の面持ちを浮かべながら、岩倉がぷりんとした桃尻を眺め回す。
「う、うぅ……」
 苦痛に呻く美晴の肛門から尻尾のように飛び出たネックレスの残り部分が、眩い輝きを放ちながらちゃらちゃらと揺れた。
「さて、ではいよいよお仕置き本番といくかの」
 そのままの体勢から、岩倉がさっと右手を上げる。
「そりゃ!」
 思いきり、美晴の尻を張り飛ばした。
「ひいぃっ!」
 美晴の甲高い悲鳴が、部屋中に響く。
「ほれ、ほれ、ほれ、ほぉれぇっ!」
 サディスティックな笑みを浮かべながら、岩倉は何発も何発も、やりたい放題に美晴の尻をはたきまくった。
「いっ! いたっ! いやっ! いやああっ!」
 柔らかな肉塊がぶるぶると震えるたび、美晴の首が連動するように左右に揺れる。
「ひっひ、まるで猿のようなケツになったの」
 白く滑らかな臀部に赤い手形がべったり張りついたのを確認してから、岩倉が荷物のような扱いで美晴をベッドに投げ捨てた。
「ふん、少しは自分の立場を思い知ったか。この猿以下のバカ女め」
 見下すように言い放つと、リボンを拾い上げてずいと美晴に顔を寄せる。
「で、だ。それだけは、などとほざくからにはこのリボン、何か特別なものなんだろうな?」
「……だ、大事な人からの……プレゼント、です」
 観念したようにうなだれながら答える美晴を、岩倉がふふんと鼻で笑った。
「大事な人……恋人とか、そういうやつか?」
「将来、そうなれればと……」
 鈍く濁った眼光とともに放たれた疑問に、美晴がおずおずと答える。
(み、美晴姉ちゃん……)
 やはり、美晴は自分を待っていてくれたのだ。
 長い間胸のうちに抱いていた確信がうぬぼれでも勘違いでもなかったことを知って、隼人はこんな状況でありながらついつい顔をほころばせる。
「ほー、将来。と、いうことは……お前もしかして、まだ処女か?」
「……」
 岩倉の不躾な質問に、美晴は無言のまま恥ずかしそうに頷いた。
「ほうほう、そいつは結構な話だな。どこのどいつか知らんが、わざわざワシのためにお前の処女を取っておいてくれるとは、嬉しくてガマン汁がびちょびちょ出るわい」
 下品なことを言いながら、岩倉が手にしたリボンと美晴をじろじろと見比べる。
「ふん……だったら、こうしてやるかの」
 岩倉がリボンをてらてら黒光りする淫棒に軽く巻きつけ、ごしごしとしごき始めた。
「そら、こっちもおまけだ」
 さらに伸ばしたリボンを尻の割れ目に挟み込むと、穴の洗浄でもするかのようにずりずりと上下に擦りつけてみせる。
(あっ、あいつ……!)
 隼人がぎり、と唇を噛んだ。
 見せつけられたのは、自分の決意が、希望が、愛情が、醜い男の体液と糞でぐちょぐちょに汚されていく、光景。
「ひっひ。こいつは口だ。たっぷり味わえ」
 隣の部屋で歯噛みする隼人の存在など知る由もないまま、岩倉は汚れたリボンを猿ぐつわの要領で美晴の顔に巻いた。
「ん、んんーっ!」
「ふん、ガキっぽい趣味だが、こういう使い道には悪くないな」
 必死に首を振る美晴のたなびく黒髪をわしづかみにして、岩倉がにたりと笑う。
「どうだ、美味いだろう。今後ワシの一物はもちろん、ケツ穴もタマ裏もどんどん舐めさせてやるからな。今のうちから味を覚えておけい」
 そう言い放つと、美晴の身体を仰向けに転がして腰のくびれをがっしとつかんだ。
「さて、ではそろそろぶち込んでやるかの」
 二人の位置が少しずれ、岩倉の背中が窓と向き合う体勢になる。
 当然、美晴の視線も方向が変わった。
『――!!』
 一瞬、隼人と美晴の目線が、交錯する。

 ――――見ないで――――

 その眼差しはおそらく、美晴から隼人に向けた最後の、願い。
(み、美晴、姉ちゃん……)
 隼人は、瞬時に全てを悟る。
 だがそれでも、その場から離れることはできなかった。
(美晴姉ちゃん……!)
 目を血走らせながら、瞬き一つすることなく、眼前で起きること全てを、ただひたすら脳の中心へと刻み込んでいく。
「ほれ、よそ見をするな! こっちを向けい!」
 美晴のあごを押さえると、岩倉はその色白で端整な顔に何度も唾を吐きかけた。
「ひっひ! そら、そら!」
 さらに何発もの往復ビンタをくらわすと、桃色の綺麗な乳首をクリップごと引っ張りながら力任せの挿入を始める。
「んっ! んぐっ! んんっ! んんんーーーっ!」
「おうおう、確かに処女じゃな! ぎちぎちときつくて破りがいがあるぞ!」
 泣き叫ぶ美晴に対し、岩倉は愉悦の表情を浮かべながらなおもぐいぐい腰を押しつけた。
「うぐっ! んぐぐっ! んっんっ! んぐうううっ!」 
「ひっひ、泣け泣け! お前がピーピー騒げば騒ぐほど、ワシはますます燃えてくるわい!」
 そんな半狂乱の時が、しばらく続いて。
「……お?」
 岩倉の動きが、一旦止まる。
「どうやら、破ったようだの」
 鼻息荒く、勝ち誇ったように呟いた。
「う……ううっ……」
「ふん、いくら泣いても今さら元になんぞ戻りゃせんわい」
 すすり泣く美晴にそう吐き捨てると、岩倉はすぐに本格的な抽送を始めた。
「ひっひ。やはり初めの一発は子宮に注ぎ込んでやるのがいいかの」
 ぶつぶつとそんなことを言いながら、身動きのとれない美晴を徹底的に責め抜いていく。
 ――やがて。
「出すぞ、出すぞ、出すぞ! ほれ、くらえいっ!」
 岩倉が美晴の両脚を自分の胴に絡ませたまま容赦なく膣の奥に精を吐き出し、
「ん、んん……う……うぅ……」
 美晴はびくんびくんと身を震わせながらも、その全てを余すことなく胎内へと受け入れた。
「ふう、出た出た。さて、次は髪にかけてやるか、それとも耳の穴にするか。せっかくだから好きな方を選ばせてやるぞ、ひっひ」
「う、ぅ……」
 薄汚く笑う岩倉を見上げた美晴の目から、宝石のような涙が一粒、こぼれ落ちる。
(っ……くっ……!)
 その一部始終を見つめていた隼人の唇から流れたのは、真っ赤に染まった血の滴。
 飛び移ることは、可能だ。
 子供の頃のように、美晴の部屋へ飛び込んでいけばいい。
 何なら窓の一枚くらいぶち破ってやるのもいいだろう。どさくさに紛れて、ガラスの破片であのオヤジの頸動脈を切ってやるのも悪くないアイディアな気がする。
 だが、隼人にはそれができない。
 できるはずなど、なかった。
 隼人は今、両膝を床についたまま、立ち上がれないほどの脱力感に襲われている。
「あ、ああ……」
 がっくりとうなだれ、肩を落とした。
 ぼんやり霞んだ視界に飛び込んできたのは、先っぽを濡らしながらぎんぎんにいきり立つ、自らの一物。
 そして――。
 今まで見たこともないほど大量の白濁がべったり張りついた、自室のくすんだ壁であった。



※おまけストーリー『隣のお姉さんは、誰と ――Behind――』はこちらから!
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[ 2015/02/12 16:22 ] プチNTR | TB(-) | CM(0)
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