「ふーん、そう……ま、いいや。とりあえずそういうことにしておいてあげる……よっ!」
「あ、んんっ、ああぁっ!」
濡れそぼつ裂け目にいきり立つ肉棒を突き込まれるたび、千織は快感に溺れた声で喘いだ。必死に虚勢を張っているがそんなもの、龍星の剛直が放つ雄の圧力の前にはひとたまりもないことは明白であった。
「っ……ぁ……」
友樹は胸をかきむしりながら、声にならない呻きを漏らした。
すぐにここから立ち去ろう。全てを見なかったことにして、何もかも忘れてしまうんだ。
そんな思考が、真っ白な脳内を細い毛のようにちょろちょろとよぎる。
だが、友樹は何もできなかった。
さっき見た夢と同じように身体が固まり、一ミリたりとも動くことができない。悪夢と何も変わらないみじめな状況が、ここには確かな現実として存在していた。
(い、いや、違う……)
ある意味では、現実の方がよほど悪夢めいているのだ。
龍星に貫かれている間、母は本気で嫌がるそぶりは一度も見せていない。
息子である自分の存在を気にはしても、結局最後に口をついて出るのは快楽の淫声。女体の芯をえぐられればえぐられるほど、千織の声は愉悦の色をどんどん濃くしていた。
(それに……)
息子の目から見ても、母は幸福をたっぷり享受しているように思えた。
夫を亡くしてから今まで、決して満たされることのなかった「何か」を自分の親友に埋めてもらっている。その事実は、母の顔を見るまでもなく十分理解することができた。
(だとしたら……)
もはや自分に抵抗するすべはない。
誰にも強制されることのない自由恋愛の結果として母がこの道を選んだならば、息子である自分に口を挟む権利など、本当にかけらほどもありはしないのだ。
「出すよ、千織さん! お尻に思いっきりぶっかけるから!」
「い、いいわっ! 来て! 龍星くんの、お尻にかけてえぇっ!」
「っ……!」
なおも続く二人の熱烈な情交を、友樹は唇を噛み締めながら見つめた。
たった一枚、薄っぺらなのれんを隔てただけの台所が、友樹の目にはとてつもなく厚い壁に阻まれ、踏み込むことのできない異世界に映った。
「かあ、さん……」
そしてこの時、自分の底から得体の知れない甘美な情動が湧き上がりつつあるのを、友樹はまだはっきりと自覚してはいなかった。
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