「では、お身体を綺麗にさせていただきます」
浴室では、咲野子が雅文の仕込んだボディーソープを塗ったくり、先手を取るように露木を洗い始めていた。
「んっ……ん、うぅんっ……」
泡のおかげで動きは滑らかだが、敏感な部分がこすれるせいか、時々こそばゆそうな喘ぎが口からこぼれる。
「ま、真穂も」
母を後追いするように、真穂も瑞々しい身体を石鹸まみれにして露木にひっついた。
「もっとくっつけ。隙間を作るな」
「申し訳ありません」
「ご、ごめんなさい」
咲野子が前面、そして真穂は背中。
身体を半分ずつ分け合うように柔肌を駆使しながら、それぞれのやり方で露木の気持ちいい部分をぬちゃぬちゃと丁寧にこすり上げる。
「ほら、さっさと交代しろ」
「はい、すぐに」
「わ、分かりました」
露木の叱責を受けるたび、咲野子と真穂は白泡に包まれた身体に力を入れ、ますます全身をフル回転させるように奉仕を続けた。
「よし、次は仰向けな。真穂が上、咲野子が下だ」
露木がマットに寝転がると、咲野子がすぐに下腹部へまとわりついた。少し遅れて、真穂も咲野子と向き合う体勢で露木の顔にたわんだ尻肉を押しつけ始める。
「ど、どうですか? 露木様。真穂のアソコ、気持ちいいですかぁ?」
甘ったるい声で囁きながら、真穂は露木の顔にぬめった性器をぐりぐりとこすりつけた。
「わ、わたしの方も、いかがです?」
露木のペニスを太股に挟み、素股の要領でむにむに刺激を与えながら、娘と張り合うような調子で咲野子も尋ねる。
「んー、どっちもまあまあだな。今日はどっちの中に出せばいいかなあ。うーん、迷うなあ」
「きょ、今日は、どうかわたしに!」
わざとらしく悩んでみせる露木に、咲野子が攻勢を仕掛けた。
身体を反転させると、露木の両足を抱きかかえながら膝の裏に肉棒を挟み、上下に動かしてずりずりと圧迫する。
「うお……うほっほっ」
上出来だったらしく、露木は甲高い声を発してきゅっと口をすぼめた。
「だめぇ。今日は真穂の中に出してもらうんだもん。ね? 露木様。いいでしょ?」
焦ったように咲野子を押しのけると、真穂は豊満な身体を肉の布団に変え、ずりゅずりゅと淫猥な音を立てながら露木の上を自在に走り始める。
「お、おおうっ……うぉうっ……」
これまた負けず劣らずの快感に、露木の顔がだらしなくとろけた。
「真穂は下がっていなさい。露木様にかわいがっていただくのはママです」
「えー? そんなのダメだよぉ。露木様、真穂の方がいいに決まってるもん」
言い合いとともに、母娘の熾烈な競争はさらに加速していく。
肉棒に頬ずりをしたり、尻の割れ目でしごいてみたり、足の裏に挟んでこすってみたりと、それぞれ覚えたての所作を駆使して露木に奉仕を捧げる時間が続いた。
(咲野子……真穂……)
媚びを売るように競い合う妻と娘の声を聞きながら、雅文は考える。
(あんなのは本心じゃない。あの二人が、そんなことを思うはずがない)
自分に言い聞かせるように、心の中で何度もそう繰り返した。
咲野子は真穂のために、露木の関心を自分に引きつけようとしているのだ。こんな状況でもなお、娘を思う気持ちを失わない気高い母親であり続けようとしているのだ。
そして真穂は真穂で、大好きな咲野子のために一生懸命やっているのだろう。
母親としても一人の女性としても憧れていた咲野子が、下劣な男にいいようにいたぶられている光景を見るのは、優しい娘にとって耐えがたい苦痛であったに違いない。
(つまり……)
今、あの二人は互いのことを思い合っていて、それゆえ意地の張り合いを続けているということなのだ。そうでもなければこんな馬鹿げた状況、説明がつかないではないか。
(なのに……俺が我慢できないでどうする)
雅文は洗面台の鏡に目をやると、精気なく疲れ果てた己の顔を睨みつけた。
人間、屈辱に慣れることはない。
だがそれでも、現状を受け入れるしかないのだ。
妻はもちろん、娘までがその身を犠牲にして家族を守ろうとしてくれている。なのに一番の原因である自分が音を上げるなど、到底許されることではなかった。
「よし、じゃあ二人並んでドアに身体を押しつけろ」
風呂場独特のエコーがかかった声で、露木が横柄に指示を飛ばす。
どん、と物音がすると、磨りガラスの向こうにぐんにゃりひしゃげた四つの肉塊がずらりと並んだ。
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