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テーブルには、真穂が作った夕食が並んでいる。
ごはんに味噌汁、焼き魚に肉じゃがにおひたしというありふれたメニューだが、咲野子から教わったという味つけにはその平凡さを補って余りある料理の腕がかいま見えた。
だが、その賑やかな食卓を囲むメンツの行状はといえば、全員揃って異常の一言。
「ほら、早く食わせろ。あーん」
主人の座る上座には、露木がふんぞり返っている。
「は、はい。あーん」
露木の隣に座ってぴったり身体を寄せているのは、裸エプロン姿の真穂。まるで若い新妻が夫相手にしてあげるように、露木の口にせっせと食事を運び続けていた。
「うん、これも美味いな。料理ができて男に従順。おまけに身体もエロいなんて、真穂はいいお嫁さんになれるぞ」
料理をついばみながら差別的な誉め言葉を贈ると、露木はエプロンの間に手を挟んで真穂の豊乳を揉みしだき、もう片方の手ですべすべの太股をねちっこくなでくり回す。
「ほら、咲野子。舌使いがなってないぞ。もっと気合いを入れろ、気合いを」
「……はい。申し訳ありません」
露木が目を向けたテーブルの下では、高校の体操服に身を包んだ咲野子が、膨張した一物を口に含んでフェラチオを続けていた。
最近は主役の座を娘に奪われることが多くなり、こうした黒子のような扱いをされることも頻繁だが、それでも文句一つ言わず露木への奉仕に己の全てを捧げている。
「……」
露木の正面では、雅文が虚ろな表情で眼前の狂宴を見つめていた。
同席こそ許されているものの、一人完全に疎外された状態の雅文には、感情などもはや無に等しかった。心肺停止直後の心電図みたいなラインが頭の中を走り、無機質な機械音はずっと耳の奥にこびりついて離れようとしない。
「ふう、食った食った」
おっさんのように歯をしーしーいわせながら、露木がふくれた腹をぽんぽんとなでた。
「どれ、じゃあ食後の一杯といくか」
そう言って立ち上がると、真穂のエプロンをひっぺがして椅子の上に正座させ、自分はその前に両膝をつく。
「ん、んん……」
咲野子もそれに合わせて身体の向きを変えると、椅子の下に潜り込んで露木のペニスを口にほおばる体勢を整え直した。
「おい、さっさと注げ」
振り返った露木が、無慈悲な声で雅文に命じる。
「は、はい……」
のろりと立ち上がった雅文が、卓上に置かれた酒瓶を手に真穂の横へと進んだ。
「お待たせ、いたしました……」
かすれた声で言うと、瓶の注ぎ口を娘の下腹部へと向け、股間の周辺にほんの少し、ちょろちょろと酒を垂らす。
「……おい」
露木が、雅文をぎろりと睨んだ。
「何だよ、この量。全然少ないじゃねえか。なめてんのか? こら」
「い、いえ……そんなことは……」
「いいや、なめてる。お前は目上の人間に酌をする時、こんな風にちょっとだけ注ぐのか? それでOKだと本気で思ってんのか? そんなことも分からない無能のうすらバカだから連帯保証人なんかになってとんでもない額の借金抱えちまうんだよ」
「っ……」
露木の罵倒を、雅文は唇を噛み締めながら黙って聞いた。
これは雅文なりに娘を思っての行動だった。酒の量を少しでも減らせば、それだけ早くこの空間から解放されるという目算があったのだ。
しかし、結果は完全に逆効果。
露木は機嫌を損ね、咲野子は余計なことをするなと言わんばかりに椅子の下から非難めいた目線を向けてくる。何より、肝心の真穂は困ったように黙り込むばかりで、解放までの時間はずるずると延びていく一方であった。
「……申し訳ありません。注ぎ足します」
こんなことなら初めからちゃんとやればよかったとほぞを噛みながら、雅文は露木に謝って再び酒瓶を傾ける。
とくとくと音がして、みっちり肉の詰まった真穂の太股に小さな三角池ができた。浸された恥毛が水草のようにゆらゆらと揺れるさまが、自分の娘ながら何とも淫靡で艶めかしい。
「ふん、最初からそうしとけっての。どれ、じゃあいただきまーす、っと」
露木は首を曲げると、おちょぼ口で真穂のわかめ酒をお迎えにいった。ぢゅるり、と液体を吸い込む音がして、池の面積が少し縮む。
「うーん、美味い美味い。どれ、今度はおつまみだ」
顔を上げて乳房に口を当てると、柔肉を頬張りながら乳首をくにくにと甘噛みした。
「んっ……んんっ……」
真穂がくすぐったそうに顔をしかめながら、首を何度も左右に振る。
「ひっひ、初々しい反応だな。どこかの気が強い年増女とは大違いだ。な、咲野子?」
「んっ……んぐっ……!」
露木が嘲るように笑ってかくかく腰を振ると、椅子の下の咲野子が、苦悶の表情を浮かべてそれに応じた。
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