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寝取られ・寝取り・寝取らせなどをテーマに官能小説を書いています

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プチNTR11~心もよう~

「あのな、岸本(きしもと)」
「ど、どうしたんですか? 大島(おおしま)部長。ご用なら僕がそちらに――」
「あ、ああ。いや、いいんだ。仕事の話では、ない」
「……?」
「……あのな、岸本」
「はい」
「お前確か……人妻もの、好きだったよな?」
「……はい?」

       *          *          *

「あの、もう一度だけ確認しておきますけど……」
 信号待ちの途中、助手席の岸本が大きな身体を曲げて私の顔を覗き込んできた。
「本当に、部長の奥さんとエッチして……いいんですね?」
 ほとんど睨みつけるような目線と強い口調は、上司への態度としては明らかに不穏当。
 会社ではのっそりとした動きに見合ったおとなしさで、言われたことには素直に従う岸本がこんな態度を見せるのは珍しかった。
「ああ、もちろんだ」
 私は相手を安心させるように、深々と頷いてやった。
「で、ですが……部長が、部長がいる家で、でしょ?」
「ああ、そうだ。それがいいんだよ。何だ、外に連れ出したいとでも思ったか?」
 のほほんとした顔に不釣り合いなほどの力を込めて尋ねてくる岸本に、わざと冗談めかした口ぶりでそう聞き返してやる。
「い、いえ、そんなことは……」
 岸本が困り顔で首を傾げた。自分で自分の気持ちが分からないのか、意味もなくあちこちに視線をさまよわせている。
 信号が青に変わったのを確認してから、私はゆっくりと車を発進させた。
「何しろ、十二歳差というのは思ったより大きくてな」
 落ち着いた調子を損なわないように、そう切り出す。
 結婚した時、自分は三十八歳で、妻は二十六歳。
 当時はまだ係長だったが、仕事を覚え、さらに上を狙う手応えをつかみ始めた頃であった。
 だが、十年の月日は状況を大きく変えてしまうには十分すぎる。
 部長となった私が男として確実に衰えをみせる一方、妻はといえばいよいよ女盛りとなって美しく咲き誇るばかりだ。
「結婚当初はさほど気にもならなかったが、最近年齢の差を感じることが増えてきた」
「それが一番はっきり出たのが夜のことだった、と」
「こんな時だけ妙に察しがいいな、お前」
 岸本の指摘に、私は思わず白髪の混ざり始めた頭を軽くなでつけ、苦笑する。
「ともかく、若い頃のようにはいかなくてな」 
 気を取り直して、話を続けた。
「だったらいっそ、夜に関しては潔く割り切ってしまった方がお互いのためになる」
「で、ですが、そんなことをしたら、夫婦関係が……」
「若い奴には分からんかもしれんが、夫婦っていうのは身体の結びつきだけで成り立っているわけじゃない。その辺は心配いらんよ」
「でもだからって、他の男に抱かせるなんて……そんなの、奥さんだって……」
 なおも納得のいかない様子でぶつぶつぼやく岸本に、私はまた笑いかけた。
「なに、抱かせるといっても、別にお前にくれてやるわけじゃない。最終的な目標はあくまで夫婦の関係を充実させることだからな。あいつは子供を欲しがっているし、今回のことがその助けになればとも思っている。年を取ってからの子供は大変だし、私としては無理する必要もないと思うんだが……」
 そこまで言ったところで、私は口をつぐんだ。こんな話を岸本に聞かせても意味はない。
「とにかく、このままいってもジリ貧なんでな。試してみて損はないということだ。ダメならこれっきりにしてもらえばいいだけの話だしな」
 不意に会話が途切れ、車内を重苦しい沈黙が覆った。
「……でも、部長。何で僕……だったんですか?」
 無言の気まずさを嫌うように、岸本が口を開く。
「まずはお前の口が堅いこと。あとは妻の意見でな。抱かれるならお前が安心と言っていた。少なくとも私の部下の中では一番好かれているはずだから、そこは自信を持ってくれ」
「は、はい。ありがとうございます」
 窮屈そうにぺこりと頭を下げる岸本に、私は心の中で悪戯っぽい笑みを浮かべた。
 正確には妻が口にした言葉は「だってあの子が一番人畜無害そうだし」なのだが、もちろんそれをそのまま岸本に伝えるようなヘマはしない。
「だがお前、本当にいいのか? いくら人妻好きといっても、好みくらいあるだろうに」
「い、いえ。部長の奥さんにそう思っていただけるのは、光栄です。じ、実を言うと、かなり理想のタイプに近いもので、その」
 舌を噛みそうな勢いで、岸本が即答した。
「ほう、理想のタイプときたか。それは初耳だな」
「あ、い、いえ、その……はい、あ、いえ……」
 岸本の声が、尻すぼみにどんどん小さくなっていく。
「いや、構わんよ。むしろそれくらいの方がいいさ。嫌な相手を無理にあてがうのはお前にも申し訳ないしな」
 私は笑って、岸本のがっしりした肩をぽんぽんと軽く叩いた。
 実際、岸本の言葉に驚くことは何もなかった。
 私の忘れ物を取りに出先から家まで使い走りをさせ、その礼に夕食をご馳走したのが最初。
 以来、品定めがてらあれこれ理由をつけては家に呼び、食事を共にしてきたわけだが、妻と話をする時、岸本の目はいつも輝いていた。憧れとか、ほのかな恋心とか、そんな甘ったるい感情とは異なる、獣欲に満ちたオスの光を爛々と放ち続けていた。
 年上の落ち着いた女性が好みという岸本からすれば、妻とのちょっとしたやり取りさえ胸を弾ませるには十分だったことだろう。
 本人は隠していたつもりかもしれないが、そこは二十代半ばのひよっこ。胸に渦巻く欲望を抑え込み、紳士的なポーカーフェイスを保つのはなかなかに難しい。
「ただ、避妊はちゃんとしておいてくれよ。できたはいいが誰の子だ、では夫婦の関係を充実させるどころじゃなくなるからな。妻とも話はしたが、一応お前にも念は押させてもらう」
「そ、それはもちろんです。大丈夫です」
 岸本が、安いボブルヘッド人形のようにがくがくと首を上下させた。
「まあ、守るところを守ってさえくれれば、あとは基本自由でいい。せいぜいたっぷり抱いてやってくれ」
 私はあくまで軽い調子を保ってそう言うと、ハンドルを切って最後のカーブを曲がる。
「……」
 口ぶりこそ余裕があるように装っていたが、私の胸には早くもざわざわと不穏な波風が立ち始めていた。
 少なからぬ好意を寄せてくれる、夫とは明らかに違うタイプの、若い男。
 そんな男に抱かれた時、妻は一体どんな姿を見せるのだろう。何を考え、どんな言葉を口にするのだろう。
 そしてその時、夫である自分は、果たして――。
(とにかく……)
 もう、後戻りはできなかった。
 未知の世界への扉は既に開かれ、あとは足を踏み入れるのみ。この期に及んで尻込みしたとあっては夫として、上司として、何より男としての沽券に関わる。
「……さ、着いたぞ」
 裏返りそうな声を喉の奥で抑えつけてそれだけ口にすると、私は静かに自宅の車庫へと車を滑り込ませた。

       *          *          *

 俺は今、畳に正座して上司の奥さんと向かい合っている。
 二人の足元に敷かれた布団は、当然のように一組。この状況が、自分がこれから行うことの意味をいやでも思い知らせてくれた。
「ごめんなさいね、岸本くん。うちの人がとんでもないこと頼んじゃって……いきなりこんな話を持ちかけられて、びっくりしたでしょ?」
 笑顔で話しかけてくれるのは、大島部長の奥様、貴美子(きみこ)さん。
 丈の長いキャミソールからすらりと伸びた両足を横に揃えて、見えない壁にしなだれかかるような色っぽい姿勢で座っている。着痩せするタイプなのか、思っていたより胸元や腰回りがむちっとしているのがまたむらむらと劣情を誘った。
「もしかして、幻滅した?」
 夫の仕事を心配する貞淑な妻の顔で、奥さんが尋ねてきた。
「い、いえ、そんなことは。そりゃあ今回の件は驚きましたけど、これはプライベートの問題ですし、部長が信頼できる上司だっていうことは全然変わらないです」
 あらかじめ用意していた無難な答えを、つつがなく返す。
 嘘はついていない。自分の妻を部下に抱かせる感覚はちょっと理解しかねるが、こと仕事に関していえば部長は文句なしに有能な人だと思う。
「ふふ、ありがとう。でも本当にこんなおばさんが相手でいいの? 無理、してない?」
「そ、そんな!」
 自嘲気味に呟く奥さんに、俺は思わず声を荒げた。
「む、無理だとかそんなことは絶対にありません! 黒髪の楚々とした雰囲気に、包み込んでくれる感じの柔らかな物腰、あ、あと、その、整ったスタイル……ぼ、僕にとっては奥さんは全部、その、ど、どストライクなんです!」
 言い終えると同時に顔がかーっと赤く火照ったのが、自分でも分かる。
 だが、これでは全然言い足りなかった。
 奥さんがいかに魅力的な女性であるか、そして俺がその美しさにどれほど胸をときめかせているか。肝心なことをまるで伝えられない自分の語彙のなさが何とも情けなく、恨めしい。
「どストライク、か……うふふ、そんな直球で来られると何だか照れちゃうわね。あの人にも言われたことないわ、そんなこと。でもそう言ってくれて嬉しいわ。ありがとう」
 俺の拙い賛辞を優しく受け入れると、奥さんは黒目がちの瞳をちらりと下に動かした。
「それにしても……」
 ほのかな粘り気を含んだ視線を、胸板のあたりに感じる。
「柔道やってたのよね? 岸本くん。さすが、すごくいい体格してる」
「あ、ありがとうございます。高校までだったんで、最近はちょっとたるんでますけど……」
 奥さんの言葉に頭を下げると、俺は急に気恥ずかしくなって目を逸らした。
 あちこちに視線をさまよわせてみるが、所詮はこじんまりとした八畳の和室。目が落ち着くところといえば、結局滑らかなラインを描く奥さんの肉体しかない。
「あの人のバスローブなんだけど、ちょっと小さかったかしら、それ」
 しなやかな細い腕が、すっと襟元に伸びてきた。
「う……」
 自然、深い胸の谷間が目に飛び込んでくる体勢となり、喉がごくりと大きく鳴る。
「あ、い、いえ。だ、大丈夫です。これはすぐ脱ぐんで……あ」
 口にしたそばから、俺は自分の言葉を激しく後悔した。これではまるで、やることしか頭にないケダモノみたいではないか。
「い、いえ、その、そうじゃなくて、これは、えっと、その……」
「ふふ、いいのよ。そのために来てもらったんですもの」
 おたおたと挙動不審になる俺に、奥さんは母性に満ちた温かい笑顔を返してくれた。
 そしてその美しさは、抑えていた獣性を燃え上がらせるには十分すぎるほど、十分。
「お、奥さん」
 俺はほのかに湿り気の残るふさついた黒髪をさらりとなで、奥さんの唇に顔を寄せた。
「ま、待って、岸本くん」
 押しとどめるような声とともに、ひんやりとした手が頬に当たる。
「キスは、だめ」
「え……」
 きょとんとする俺に、奥さんが静かに語りかけてきた。
「他はいいけど、キスだけはしないでちょうだい。ね、お願い。ね?」
「は、はい……」
 子供を諭すような奥さんの口調に押され、俺はいともあっさり頷いてしまった。
 これはおそらく夫、つまり部長に対する義理立てみたいなものだろう。あるいは、身体こそ許しても心までは決して許さないという奥さんなりの意思表示なのかもしれない。
 残念じゃない、と言ってしまえば嘘になる。
 だが、奥さんが嫌だと言うことを無理にやるわけにはいかなかった。それは立場がどうとかいう話じゃなく、男として当たり前のことだ。
「わ、分かりました。じゃ、じゃあ、その、こっちを……」
 俺は気持ちを切り替えて、目線をたわわな胸の膨らみへと移動させた。
「い、いきます」
 キャミソールをまくり上げておもむろに脱がせると、丸みを帯びた肉の塊が二つ、目の前でぽろんと弾ける。
「うお……」
 思わず、声が漏れた。
 奥さんの乳房は年齢相応にやや垂れ気味ではあったが、それでもしなびることなく柔らかなふくよかさを保っていた。子供を産んでいないせいか、乳首や乳輪も綺麗に整った状態が維持されている。
「ふぉおっ!」
 俺はいきなり奥さんを押し倒すと、ふくよかな肉塊にむんにゅりと顔を埋めた。
「んっ……やんっ」
 熟れた女性の芳ばしい香りと恥じらうような喘ぎが、全身の血液を瞬く間に逆流させる。
「ふっ、ふはっ、ふ、むふっ」
 舌を這わせて丸い丘陵にうっすらにじむ汗を舐めとると、左手で右乳をこねながら反対側の乳首をちゅぱちゅぱねぶり回した。
「んっ! ん、んんっ……」
 忍ぶような奥さんの鼻息が、何とも言えず甘美な陶酔感を俺に与える。
「はっ、はぁ……うぅんっ……」
 しばらく愛撫を続けるうちに、奥さんの息遣いが少しずつ荒くなってきた。顔をなでつける生暖かい吐息に、狂おしいほどの硬さで俺の股間が猛る。
「つ、次は……」
 身体の位置をじりじりとずらし、股間のしげみへと口を近づけた。
「ん、んんっ……」
 もじもじと腰をくねらせる奥さんの股に手を差し込み、両脚を軽く外に押し開く。
「あんっ」
 ぴっちり塞がっていた柔肉の隙間から、神秘の割れ目がぱっくりと顔をのぞかせた。
「うわ……」
 そう呟いた次の瞬間、俺はたまらず奥さんの秘肉にむしゃぶりついていた。
「ん、んんっ!」
 甘い声をあげ、軽くあごをのけぞらせる奥さんの様子を上目遣いに確認しながら、ほんのり黒ずんだ肉ひだとその奥に隠れた赤身をたっぷりと堪能する。
「あっ、んっ、あ、んんっ……」
 感情を押し殺すような切ない喘ぎ声をBGMに、俺はやや酸味の残る愛液でぶじゅぶじゅと喉を潤していった。
「じゃ、じゃあそろそろ……」
 枕元に置かれた新品のコンドームに手を伸ばすと、
「……あれ?」
 箱は既に開封され、つながっていたはずの袋は全て綺麗に切り取られていた。しかも、手に取りやすいよう段差をつけて入れ直してある。
 おそらく、俺が手間どらないように奥さんが用意してくれたのだろう。こういった細やかな気遣いがいかにも年上の女性らしいというか、ますますぐっときてしまうところだ。
「ありがとうございます。俺、ぶきっちょなんで助かります」
 俺は軽く頭を下げて、コンドームを装着した。
「ぅ……」
 つい、呻いてしまう。
 これはちょっと、いや正直かなり苦しかった。着けられないことはないが、自分で買うなら確実にもう一回り大きなサイズを選ぶに違いない。
 だが、ここで諦めるわけにはいかなかった。一生に一度かもしれないこのチャンス、たかがコンドームのサイズごときでふいにするわけにはいかない。
「い、いきます」
 血がせき止められるような圧迫感を我慢して、奥さんのヴァギナに一物をあてがう。
「ん……」
 覚悟を決めたように、奥さんがそっと目を閉じた。
 ほんのり汗ばんだ奥さんの顔をちらりと見やってから、おもむろに挿入を始める。
「う、ぉ……」
 めりめりと肉を押し裂いていく感触が、ゴム越しでも生々しく伝わってきた。
「ん、んんっ……」
 奥さんが眉をしかめながら、いやいやをするように軽く首を横に振る。
 同時に、ぷりぷりした肉のカーテンが、うごめくような律動できゅうきゅうと俺のペニスに吸いついてきた。
「お、奥さん!」
 全てが呑み込まれたと同時に、俺は激しく腰を振り始めた。感触を味わう余裕なんてない。止まることなど、到底できそうになかった。
「お、奥さん! 奥さん! 奥さん!」
 抽送はどんどん激しさを増し、やがて粗暴なほど力任せのピストンへと変貌していく。
「んっ! あっ! あぁっ! ああぁっ!」
 長い髪を振り乱して甲高い嬌声をあげる奥さんの姿は、普段の物静かで落ち着いた様子とはまるで別人の、想像をはるかに超えるいやらしさ。
 初めて見る姿、初めて聞く声、そして初めて味わう膣内の感触。
 奥さんの何もかもに五感を刺激され、俺はみるみるうちに射精へと導かれてしまった。
「う、うあっ、で、出ます!」
「ん、んんっ! い、いいわ! きて! きてぇっ!」
「……くぁっ!」
 下腹部の奥から衝き上げるような絶頂感に襲われ、直後、びくびく、と身体が震える。
「あ、あぅ……う……」
 動物のように呻きながらペニスを抜くと、俺は脳髄がびりびりしびれるような絶頂の余韻を味わったまま、奥さんの横にどさりと倒れ込んだ。
「ふふ、いっぱい出たわね」
 奥さんが妖艶な笑みを浮かべながら、さらりと髪をなでてくれる。
「じゃあ、お掃除しましょうか」
 身体の位置を下げると、俺の膝を軽く開き、股間にそっと顔を寄せてきた。
「……あら?」
 何か考えるように黙り込んだが、すぐにゴムを外して手早く後始末を済ませる。
「じゃあ、いくわね」
 フェラチオが始まった。
 初めは亀頭を、尿道に残った精子を吸い出しながら丁寧に。それからペニス全体にかけてをねっとり、丹念に舐め回してくれる。
「どう、かしら……?」
 裏筋に舌を這わせながら、奥さんが上目遣いで尋ねてきた。
「う、うぁ……奥さん、す、すごく上手です……き、気持ちいいです」
「ふふ、ありがとう。じゃあ、こっちもお願いできるかしら」
 奥さんは俺を誘うように艶めかしく腰をよじらせると、大人の女らしくぱんと肉の詰まった豊かな尻を目の前にそっと差し出してきた。
「は、はい」
 俺はすぐさま肉の隙間に顔を埋めると、とろけた陰部にぶじゅりと舌をねじ込む。
「あら、また大きくなった。本当、若いっていいわね」
「ふぁ、ふぁい」
 返事もそこそこに、俺は奥さんの甘やかな秘貝をひたすら、貪るように味わい尽くした。
 するとその興奮に呼応するように奥さんの口淫も激しさを増し、俺はシックスナインのまま再びの絶頂へと誘われていく。
「あ、あうっ、あっ……」
「んっ!……う……んぐ……」
 二回目といっても結構な量が出たのだが、奥さんはそれを一滴残さず飲み干してくれた。
「お、奥さん……」
 精子を口に含む奥さんに興奮した俺は、そのまま三回目へと突入することにした。体力には自信があるし、何よりこの人が相手だったら無限に射精できそうな気がした。
「くっ……」
 またしても、きついコンドームを一物にはめる。
「あ、あのね……岸本くん」
 ゴムと格闘する俺の様子を窺っていた奥さんが、おずおずと口を開いた。
「そ、その……ごめんなさい、コンドームのサイズ。わたし、勝手にあの人と同じくらいかと思っちゃって……きつい、わよね?」
「え、ええ。まあ、ちょっと」
「そう……そうよね……すごく苦しそう、だもんね……」
 奥さんはしばし考え込むと、意を決したように頷き、俺を正面からじっと見据えた。
「じゃあ、いいわよ。次はナマで」
「……え?」
「元々そんなに危ない日でもないし……三回目だからもう薄くなってるだろうし……ちゃんと外に出してくれれば……」
 奥さんが何となく言い訳じみた口調で、それに似合わぬ大胆な言葉を口にする。
「ほ、本当に、いいんですか?」
「……ええ、いいわよ。さ、どうぞ」
 最終確認にそう答えると、奥さんは両手両膝をついて尻を上げ、俺に捧げるようにゆっくり割れ目を差し出してきた。
「お、奥さん!」
 汗ばんでむわんと匂い立つ秘肉を肉の棒で一気に串刺しにすると、
「お、奥さん! 奥さん!」
 俺は全身を包み込まれるような感覚に襲われながら、奥さんの丸く柔らかな尻をぱんぱんとめった突きにした。
「あ、あんっ、き、岸本くん、はげし、激しっ……いぃっ」
 四つん這いのまま甘い声を奏でる奥さんを背中の上からがっちり押さえ込むと、足を払って寝バックの体勢に持ち込み、顔を横へと向ける。
「お、奥さん……」
 唇を、近づけてみた。
「名前で、呼んで……奥さんじゃなく、名前で……」
 奥さんの小さな声と艶めかしい吐息が、俺の頬をそっとなでる。
「き、貴美子……さん」
「ん……」
 呼びかけに応えるように、貴美子さんがそっと目を閉じた。
「ふっ……」
 俺はこの機を逃すまいと、すぐさま貴美子さんの唇を奪った。ぷるぷると柔らかな感触に、頭の奥がじーんとしびれる。
(うわ……貴美子さん、舌まで……)
 俺は夢中で貴美子さんの求めに応えた。互いの舌を、まるでダンスでも踊るようにうねうねまとわりつかせながら、口内を隅々まで、貪るように舐め尽くしていく。
「き、貴美子さん、俺、俺、もう……」
 キスの間もひたすら動かし続けていた腰を、俺はさらに激しく振った。壊れた機械のようにがくがくと、射精に向けてラストスパートを始める。
「ん、いいわっ、岸本くん! そのまま、そのまま中に……きてっ!」
「えっ……!?」
 俺は一瞬自分の耳を疑ったが、奥さんの言葉の前にもはや理性など消し飛んでしまった。
「い、いきます! き、貴美子さん、俺、貴美子さんの中で、いきますっ!」
「いいわっ、きて! 岸本くん、きて、きてぇっ!」
「あ、あうっ……う、うぅっ……」
「あ、あぁっ、ああぁーーーっ!」
 三度目とは思えないほどの勢いと量で白濁が放たれると、貴美子さんはこの日一番の嬌声を上げながら、のけぞるように何度も細い首を振った。


 いまだ情事の熱気が残る八畳の和室で、俺は一人呆然としていた。
『そ、その……すいません。俺、つい中に……あと、キスも……』
『いいのよ。わたしが言い出したことなんだから、気にしないで』
 つい今しがた貴美子さんと交わした会話を、口の中で反芻してみる。
「で、でも、やっぱりまずかった、よな……」
 いくら奥さんに求められたといっても、約束を破ってしまったことは間違いない。
 しかも一番大事な部分を反故にしてしまったのだ。己を律することができなかった自分に、俺はどうしようもない無力感を覚えてしまう。
「だけど……」
 素晴らしい至福の時が、脳裏にまざまざと蘇ってきた。
 中に出した時の、あの全身が痺れるような甘美に満ちた感覚。ペニス全体を包み込むようにねっとりと絡みついてきた貴美子さんの肉ひだ。
 全てが最高で、何から何まで、気持ちよかった。
「ぅ……」
 また、股間がむくむくと大きくなる。
「貴美子さん、かなり激しくイってたよな……あの時」
 ある種の確信と手応えを胸に抱きながら、俺はぽつりとひと言、そう呟いた。

       *          *          *

 夫婦の寝室で、わたしは夫と二人、ベッドに並んで座っている。
「それで、どうだったんだ?」
 夫が腕組みをしながら、苛立たしそうな渋面でわたしに尋ねてきた。
 夫がこんな風になるのは珍しかった。普段はよくも悪くも冷静で大人の男の威厳たっぷりなだけに、こういう子供じみた態度は何とも新鮮に感じられる。
「どうも何も、しましたよ。ひと通りのことは」
 冷めやらぬ体の火照りを抑えつけるように、わたしはわざと声のトーンを低めて答えた。
「ひ、ひと通りの、こと……」
 夫はそう言ったきり、あとはぐっと喉を詰まらせたまま黙りこくってしまった。
(そんなにショックなら、初めからこんなことしなければいいのに……)
 わたしは心の中で、そんな意地の悪い思考を巡らせてしまう。
 夫に頼まれ、夫の部下に抱かれた。
 文章にすれば一行だが、でもやはり、どう考えてもこんなことは常軌を逸しているのだ。
「そ、そうか。で、だ。何だ、その……よかったか?」
「ええ、まあ……」
 上ずった声で早口にまくしたてる夫に、わたしは曖昧な調子で言葉を濁した。
「ええ、まあ、じゃない。はっきり言ってくれ。あいつに、岸本にどんなことをされたのか、どれくらい気持ちよかったのか、全部、包み隠さず喋ってほしいんだ」
 うつむきがちだった夫が顔を上げ、わたしをじっと見つめてくる。
「そう。じゃあ……」
 わたしはゆっくりと、焦らないように気をつけながら話し始めた。
 前から思い切り突かれたこと。
 互いの性器を口に含み合ったこと。
 最後は背中の上からがっちり抑え込まれてしまったこと。
 途中から恥ずかしさが麻痺して、大胆に気をやってしまったこと。
 若い男の引き締まった肉体と大きく硬いペニスが、今までにない快感を与えてくれたこと。
 岸本くんとの交わりと、その際感じたことを淡々と、できるだけ詳しく説明してあげる。
「お、お前……ここでずっとお前を待っている間、俺が一体どんな気持ちでいたと……」
 夫がわなわなと声を震わせながら、独り言のように呟いた。
「どんな気持ち? それを言うならあなたこそ、わたしがどんな気持ちで岸本くんに抱かれてこの部屋に戻ってきたと思ってるんです?」
 わたしは少しむっとした表情と強い口調で、そう言い返してやる。
「大丈夫、ちゃんと避妊はしましたから」
「……」
 夫はまた下を向いて黙り込んでしまった。若い頃に比べてほんの少し薄くなった頭頂部が、今はなぜだかやけに目についた。
 いっそ、唇を奪われ、中に出されたことまで話してしまおうかとも思った。
「岸本くんがあまりにもよくて、ついわたしから求めてしまったの」
 そんな残酷な言葉を夫に叩きつけてやるのも、悪くない気がした。
『お前、他の男に……抱かれてくれないか?』
 夫に突然そう持ちかけられた時、自分は冗談でも何でもなく目の前が真っ暗になったのだ。
 あの瞬間のショックを考えれば、一回膣の中に射精されたことを告白するくらいでちょうどバランスがとれておあいこといったところだろう。
(でも……)
 わたしはすぐに気持ちを落ち着け、考え直す。
 自ら望んで約束を破ってしまったとわざわざ夫に報告する必要など、どこにもないのだ。
 わたしはこの人との子供が欲しいし、この人と夫婦生活を充実させたい。こんなことで長年築き上げてきた関係に亀裂が入るなどまっぴらごめんだった。
(だったら……)
 時には嘘が必要なこともあるだろう。隠し事をする場合だってあるだろう。話をすることは大事だが、全てを馬鹿正直に言うばかりが夫婦のあり方では、決してないはずだ。
「それで、どうするんです? まだやるんですか?」
「今はちょっと……答えられない。今後のことは、少し考えさせてくれ」
 話を逸らすようにわたしが尋ねると、夫は顔と声に苦渋の色をにじませながらそう答えた。
「そうですか……分かりました」
 夫にそれだけ返したわたしの胸の中には、安堵のようなざわめきのような、何とも不思議な感覚が広がっていた。

       *          *          *

「くっ……」
 私は、今にも吐きそうな気分で部長席に座っていた。
 ここが会社じゃなければ、周囲の物を手当たりしだいに引っくり返して思いっ切り頭をかきむしるくらいのことは平気でしていただろう。
 五十年近く生きてきて、こんな乱れた精神状態に追い込まれたのは初めてだった。
 あの時から、ずっとそうだ。
 寝室で一人、岸本に抱かれた妻が戻るのを待っていた時間に感じた、心が引き裂かれそうなほどのもどかしさ。
 それが今も変わらず続いて、私の心をウイルスか何かのようにわらわらと蝕んでいる。
 夫婦は身体だけじゃないだの、夜に関しては割り切った方がいいだの、岸本に散々偉そうなことを言っておいて、いざ妻が抱かれてしまえばこのざまだ。全くもって情けない限りとしか言いようがない。
『大丈夫、ちゃんと避妊はしましたから』
 あの時、妻は嘘をついた。
 顔の前で祈るように両手を組み合わせながら、私は心の中でそう確信していた。
 本人は気づいていないが、妻には嘘をついている時に必ず出る癖がある。耳に手をやって、髪のほつれをやたら気にするようになるのだ。
 そしてあの時、妻は確かに耳元をなでつけていた。しかも、何度も何度も、繰り返しでだ。
(なぜ、だ……?)
 私は沸騰する脳味噌を必死に鎮め、状況を整理してみた。
 岸本の方から膣内への射精を要求したとは考えにくい。あいつの性格上、上司の妻に自分の主張を押しつけることはまず皆無とみて間違いないだろう。
 だとすると、やはり妻が中出しを望んだという結論になるわけだが――。
「くっ……くそっ、くそっ、くそっ……」
 顔をしかめ、唇を歪めながら、誰に向けるでもなくそう吐き散らす。
 もし妻が自ら求めたのだとしたら、それは夫である自分に対する重大な裏切り行為だ。
 たとえ安全な日であったとしても、中に出されていいはずがない。それを完全に我を忘れ、欲情に身を委ねてしまったとあっては、貞淑な妻などお笑いのとんだ淫乱女ではないか。
「っ……」
 だが、そこまで考えたところで私の思考に急ブレーキがかかった。
 仮にそれが事実であったとしても、私には妻を責める資格などないのだ。
 元々こんなことを言い出したのは私で、妻は最後まで反対していた。
 ショックを受け、涙ぐむ妻を説得して半ば無理やり他の男に抱かせたのは、他でもないこの自分自身ではないか。
 そもそも今回の件だって、妻は酷い仕打ちをした私に対する当てつけの意味をこめ、わざと岸本の精子を受け入れてみせたのかもしれない。
 あるいは私に愛想を尽かし、もっと若い男の子供を産もうとしている可能性だって――。
「い、いや……まさか。まさか、な……」
 私は二度、三度と首を振った。さすがにこれは飛躍しすぎというものだろう。冷静さを取り戻すべく、目の前のコーヒーを一口すする。
 ともかく、問題はこれからのことだ。
「やはり……」
 この件は今回一度きりのこととして、あとは何事もなかったように元の生活に戻る。
 それが一番穏当、かつ妥当な結論であるように思えた。
 実際、そうしなければ精神が摩耗して、耐えられそうになかった。
「……」
 だがその一方で、私の胸にはそんな理屈などあっさり打ち消してしまうような荒波が次から次へと押し寄せてくる。
 たくましく引き締まった男の身体にしなだれかかる妻の姿。
 硬くそそり立つ一物をとろけた表情で口に咥え込む妻の姿。
 女の穴を開いて甲高い喘ぎ声をあげながら腰を振る妻の姿。
 中に出された精子を全て受け入れ自ら絶頂を迎える妻の姿。
 とめどない妄想は脳内をぐるぐると駆け巡り、いつしか精神の中枢にまで圧倒的な支配力を及ぼしていた。
「っ……」
 股間が今にもはち切れそうなほどに、むくむくと膨れ上がる。
 憂鬱で、妻への嫌悪感すら覚えている心とは裏腹に、身体の方は恐ろしいほど正直に性的な興奮を示していた。
「くそっ……」
 もう一度、呪詛のように吐き捨てる。
 気持ちはまだ、決まっていない。
 だが、身体の動きはもう、止められなかった。
「……」
 私は顔をしかめたまま立ち上がると、ペニスの膨張を悟られないよう注意しながら、岸本の座る窓際の席に向かってゆっくりと歩き始めた。
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[ 2015/12/26 17:57 ] プチNTR | TB(-) | CM(0)
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