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愛のすきまで交わって・91

「よし、じゃあまずは」
 和臣は引き出しを開けると、奥から小さな木の写真立てを取り出して机の上に置いた。
 もちろん写っているのは、笑顔の希恵子。
 愛妻写真を職場の机に飾ることはこれまでも考えていたが、何となく気恥ずかしくて、結局実行できずにいた。
 だが、これはいい機会だ。
 自分の愛情を示すために。志を忘れないために。そして何より目の保養に。やるなら、今が一番いいタイミングに思えた。
「これでよし、と」
 写真の希恵子に軽く笑いかけると、和臣が気持ちを入れ直すように、うーん、と一つ伸びをする。
 その、瞬間。
「……あ、あれ?」
 久しく感じたことのなかった脈動が、和臣の股間をどくどくと打った。
「う、うわ……」
 おとなしそうな冴えない顔が、初めて性に目覚めた小学生のようにきらきらと輝く。
「嘘、みたいだ……」
 さっきと同じ言葉を、また漏らした。
「これなら、希恵子さんと……」
 今まで抑えられてきた欲望が、心の奥で一気に芽を吹く。
 ツキが、巡ってきた。
 ほとんど直感的に、和臣はそう思った。
 あの出張以来仕事は順調だし、借金も黛のお陰で帳消しになった。おまけにここ数年ずっと悩んでいたEDまで解決とあっては、いいことずくめすぎて怖くなるくらいだ。
「うん……うん」
 幸運を噛み締めるように、和臣が何度も頷く。
 夢と希望と、そして愛。
 全てがごちゃ混ぜになって、ぐるぐると頭の中を駆け回った。
「よし」
 気合いを入れるように、むんと一つ姿勢を正したかと思うと、
「まずは仕事だ。頑張ろう」
 和臣は充実感にあふれた顔で、またキーボードをぱしゃぱしゃと叩き始めた。


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[ 2018/03/02 11:27 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)
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