「うーん……」
煮え切らない様子で首を傾げながら、和臣は腕組みをしてさらに思案を続ける。
確かに黛は頼りになるが、だからといっていつも頼りっぱなしが許されるわけではない。
ましてや今は負債を抱えている状況。黛の善意に助けられて普段はさほど自覚せずに済んでいるが、本来なら決して甘えたことを口にできる立場ではないのだ。
「ぬぬ……」
ここはやはり、自力で何とかした方がいいのだろうか。
和臣の思考が、ぐらぐらと揺らぐ。
――そこに。
ポケットの中で、マナーモードにしてある携帯電話がぶるぶるとのたうち回った。
「おっと」
和臣がすぐ取り出して着信表示を見ると、そこには「黛さん」の文字と見慣れた番号。
「うわ……」
あまりのタイミングのよさに変な感心を覚えながらも、和臣はとにかく電話をとる。
「はい、古沢です」
「え? 今晩ですか?」
「ええ、ええ……はい、行きます。大丈夫です。今日は残業もないので」
「はい。じゃあ『BAR SWAP』にいつもの時間で。はい、よろしくお願いします」
誰もいない空間に向かってぺこぺこ頭を下げながら、ボタンを押して通話を切った。
「……よし」
自然と、腹が決まる。
せっかく神様がくれたチャンスだ。これを活かさない手はない。
「やっぱり、黛さんに聞いてみよう」
役目を終えた携帯電話をポケットに戻した時には、和臣の思考はどうやって黛に相談を切り出すかという方向に論点が移っていた。
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