「んっ!」
一瞬の出来事に、希恵子の口から鼻にかかったような喘ぎ声が漏れた。
「……う、ううん。何でもないの。ちょっと喉が引っかかったみたい。ごめんなさい」
そう取り繕うと、希恵子は何度か咳払いをしつつ、肩越しにぎろりと黛を睨んだ。
「ふふふ」
だが黛はまるで悪びれることもなく、希恵子が正面を向いたのを見計らってまたゆっくりと腰を動かし始める。
「ええ。風邪とかじゃないから……っ……ええ、本当に、大丈夫だから。心配……しないで。うっん……ありがとう」
何とか話を続けながら、身体の向きを変えてベッド近くを逃げ回る希恵子に、黛は両乳首をこりこりと愛撫しながらの緩やかなピストンを執拗に繰り返していく。
「……じゃあ、お仕事頑張って。でも、無理はしないでね」
どうにか無事に会話を終わらせると、希恵子は全身の力が抜けたように携帯電話をぽとりとベッドに落とした。
(よ、よかった……)
希恵子の心にまず広がったのは、どうにかばれずに済んだという、安堵。
「……」
だがその次に襲ってきたのは、自分自身に対する深い罪悪感であった。
やはり自分は、夫に取り返しのつかない嘘をついているのではないか。そんなどうしようもない不安が、希恵子の胸を否応なしに蝕んでいく。
「ふん」
こっちを見ろと言わんばかりに、黛がぱん、と一つ希恵子を突いた。
「どうでした? 他の男に抱かれながら旦那さんとお話する気分は?」
「っ……」
嫌味な薄笑いとともに放たれた問いかけに、希恵子の顔がみるみるうちに強張る。
「本当は思い切り突きまくってやってもよかったんですけどね。あの声我慢できないでしょ、奥さん」
「……」
意地の悪い口調でさらに言い募る黛を、希恵子は怒りの表情で黙って睥睨した。
やはりさっき思ったことは、性的な快感に惑わされての世迷い言。こんな男に自分の全てを委ねるなど、未来永劫あってはならない。
「ああ、そうだ。いいことを思いついた」
ペニスを抜いてその場から離れると、黛は脇に置いたカバンからスマホを出した。希恵子の持つ古いガラケーとは違い、発売時に行列ができたとテレビで話題になった最新型だ。
「な、何を……?」
「なに、おまけですよ、おまけ。ボーナスステージです」
希恵子の質問に、黛はとぼけた調子でそう返した。
「えーと」
電話をかけ始めたかと思うと、希恵子をベッドに這わせ、丸っこい尻をつかみながら一物を注入する。
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