* * *
いつもの昼下がりに、いつものホテル。
「あっ、んっ! あ、ああぁっ!」
希恵子はいつものベッドで黛にまたがり、激しく腰をグラインドさせていた。
「今日の奥さんはどんないやらしい腰の振り方をしてくれるのか、今から楽しみです」
始める前は黛のそんな言葉に怒りを覚えた希恵子だが、蓋を開けてみれば、身体はいかにも正直。
「ん、んん、ああぁーーっ!」
この日何度目かのオーガズムが押し寄せると、希恵子は快楽を貪るような腰の動きを止めることができないまま、大きな声ではしたなく気をやった。
ちなみに黛の方は、まだ一度の射精も済ませていない。
「ふふふ……」
例によって余裕の表情でにやにやと笑いながら、たまに思い出したように下からがんがんと希恵子を突き上げるばかりだ。
(こ、こんな、凄いの……もう、耐え切れない……)
とめどなく放出される脳内麻薬に、希恵子の頭がぼんやりと霞む。
認めたくはない。
受け入れたくなどなかった。
だが、この理性の全てを弾き飛ばす絶頂と快感に、希恵子はもはや意識をつなぎ止めておくことすらままならなくなっている。
認めなくても、受け入れなくても、それは動かしようのない、現実。
(もう、いっそ……)
何もかも黛に委ねてしまった方が、楽かもしれない。
希恵子の脳裏を、そんな誘惑がちらりとよぎった。
黛と交われば交わるほど新たに開いていく、自分の内なる扉。
どんなに平静を装ってみてもそれは表面上だけのことで、肉体の奥底からはマグマのような欲望が、噴火でも起こしたみたいに後から後からとめどなく湧き出してくるのだ。
だったらもう、成り行きに任せてしまった方がいいのではないだろうか。
頼りにならない理性にすがっていつまでも意地を張るより、目の前の享楽に従う方がよほど自然なのではないだろうか。
(そう、よね……)
自らを納得させるように、希恵子が微かに頷く。
(どうせ、ばれることはないだろうし……)
心が一線を越える方向に、ぐらりと傾きかけた。
だが、その時。
いきなり、テーブルに置かれた希恵子の携帯電話が鳴った。
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