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愛のすきまで交わって・45

「!!」
 希恵子のぱっちりと大きな目が、さらに丸く、かっと見開かれる。
 表示など見るまでもなく、相手が誰かは即座に分かった。
 この着信メロディーは昔和臣と見た映画の主題歌。相談して一緒に設定した、お互いだけの特別な曲だ。
「あ、あ……」
 和やかな音楽を響かせながらちかちかと光る機体を、希恵子が呆然と見つめる。
 単なる偶然か、それとも夫婦の見えざる絆か。
 とにかく、和臣からの電話で、希恵子は折れかかった心を一気に立て直した。
「和臣くんですか?」
「……ええ」
 尋ねた黛に、希恵子が小さく一言返す。
「ふむ……なるほど、これはいいタイミングだ」
 ぽんと手を叩く黛の口元が、いかにも悪事を企んでいますといった感じに醜く歪んだ。
「早く出た方いい。切れてしまいますよ」
 身体を起こして一度ペニスを抜くと、黛は希恵子にそう促してそそくさと距離を置く。
「え、ええ……」
 急いでベッドを下りた希恵子が、テーブルに手を伸ばして携帯電話を取った。
「は、はい。希恵子です」
 和臣との会話が始まる。
「ごめんなさい。ちょっと出先で手が離せなくて。和臣さんは会社から?」
「そう……今日も遅くなりそうなの?」
「ううん、そんなことない。和臣さんがわたしのために頑張ってくれていること、よく知っているから」
 そんな当たり障りのない言葉を返しているうちに、希恵子は一瞬自分の置かれている状況を忘れそうになった。
 ここはホテルでなく、自分の家。
 誰かと一緒ではなく、一人。
 もちろん裸でもなく、いつもの地味な普段着。
 ついそんな錯覚を起こしそうになるほどに、和臣との会話は自然で、普通だったのだ。
「……ふん」
 口端を釣り上げた黛が背後から近づき、両胸をわしづかみにしながら熱い剛直を突き入れてくるまでは。


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[ 2018/01/15 11:39 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)
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