NTR文芸館

寝取られ・寝取り・寝取らせなどをテーマに官能小説を書いています

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愛のすきまで交わって・5

「っ……」
 妻として大事な何かをおろそかにしてしまった罪悪感が、希恵子の心を追い込むようにちくちくと刺す。
「それでね、奥さん」
 黛がタイミングを見計らったように身を乗り出し、顔を上げた。
「聞いていただけますか? 私の話」
「え、ええ」
 私にいい考えがある、という黛の言葉が、希恵子の耳に蘇ってくる。
「実は和臣くんの借金、立て替えてあげる準備があるんですが……」
「え?」
 意外な言葉に、希恵子は目を丸くした。失礼だが、この黛という人物がそんな義心あふれる男だとはとても思えなかった。
「いくらグレーゾーンが撤廃されたといっても、この手の金利はやはり高いものです。放っておけばどんどん金額が膨らんで、ついには利息を返すこともままならなくなるでしょう。でもここで私が立て替えれば、それは私への個人的な借金になります。そして私は、利息など取る気はさらさら、これっぽっちもありません」
 黛が、親指と人差し指で小さく「これっぽっち」を示してみせる。
「……」
 希恵子は黙り込んだまま、相手の真意を探るように、その指先をじっと見つめた。
 確かに、いい話ではある。
 五百万が大金なことに変わりはないが、元本だけ返せばいいならかなり気は楽。とりあえず雪だるま式に借金がかさむ心配がなくなるだけでも十分にありがたい申し出といえた。
 だがそれでも、希恵子の脳裏をちかちかとよぎって離れないのは「警戒」の二文字。
「なぜ、そんなことを……仰ってくださるんですか?」
「酒場だけの付き合いとはいえ、和臣くんは大事な友人ですから」
 訝しげな希恵子に対し、黛は笑って肩をすくめながら鷹揚な調子で答えた。
「でも、五百万なんて大金……飲み代を立て替えるとかじゃないんですから……」
「あー、実は私ね、学生時代に起業をしたんですよ」
 戸惑う希恵子に突然そんなことを言うと、黛は遠い目で窓の外を見つめる。
「友人二人と一緒に、コンピューター関連の会社をね。当時はまだ珍しかったこともあって、そこそこ大きくできました。会社自体は数年で買収されましたが、株の売却でまとまった金が残りましてね。それを投資に回したら運よく結構な財産を作ることができたんです。いわゆるITバブル長者ってやつなんですが、お陰さまで今も働かずにのんびり暮らせています」
「はあ……そうですか」
 要は単なる金持ち自慢か。
 そう思った希恵子だが、ここは仕方なしに気のない相槌を打っておく。


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[ 2017/11/28 11:24 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・4

「最初は、ちょっと小遣い稼ぎをするだけのつもりだったんです。希恵……妻には僕のせいで苦労ばかりかけてますから、少しでも家計を楽にできればと……なのに、何で、こんな……」
 黛はレコーダーの電源を切ると、そのまま機体をスーツの内ポケットに戻した。
「ま、お聞きの通りです。奥さん思いのいい旦那さんですね、和臣くんは」
「……」
 ほとんど嫌味にしか聞こえない黛の言葉を、希恵子は沈黙で受け流した。
 和臣は演技ができる性格ではない。嘘をつけば声や態度にはっきり出る。それがこうも真に迫った言葉を吐くということは、借金は存在するとみて間違いないのだろう。
 実際、古沢家の財政事情は苦しかった。
 和臣の勤務する会社は元々社員の待遇がいいわけではなく、当然給料も安い。
 和臣自身も決して要領のいいタイプではなく、ほどほどに働いて報酬だけ手にする発想とは無縁。それどころか、定時に仕事が終わらないのは自分の責任だからと進んでサービス残業をするほど生真面目な性格であるため、収入アップなどは初めから望むべくもなかった。
 希恵子も家計を預かる主婦として精一杯切り詰めてはいたが、それにも限界がある。
「わたしも、何かお仕事した方がいいと思うんだけど……」
「うーん……それは……どうかなあ……」
 一時はパートに出ることを考え、和臣に相談してみたこともあったが、返事はあまり芳しいものではなかった。
 多分、男のプライドというやつだろう。
 希恵子からすれば何とも理解に苦しむ感情ではあったが、それでも夫を傷つけてまで働きに出るのは自分の意に反した。
 だが――。
(あの時、わたしが……)
 多少無理を言ってでも働きに出ていれば、こんなことにはならなかった。
 自分の遠慮が最悪の方向に転がってしまったのを悟って、希恵子は深い後悔の念を覚えずにいられない。
(気づいてすら、あげられないなんて……)
 いかに夫を信じて疑うことがなかったとはいえ、隠し事の下手な和臣のこと、注意深く観察すれば必ずどこかに異変は見えたはずだ。
 にもかかわらず、希恵子はぼんやりと日常を過ごすうちにそれを見逃してしまった。
 別にわたしが借金を作ったわけではない。
 いくら夫婦でも、打ち明けてくれないものは分かりようがないだろう。
 そもそも働きに出なかったことだって、夫の強い意志を尊重したからではないか。
 そんな風に自分を正当化して、全ての責任を和臣に押しつけることができれば、話は簡単に終わったかもしれない。
 だがそれをするには、希恵子の性格はあまりに潔癖で、あまりにも純真すぎた。


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[ 2017/11/27 11:17 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・3

 希恵子と黛は、今日が初対面であった。
 夫の和臣から行きつけのバーで知り合ったと名前だけは聞いていた希恵子だが、実際に顔を合わせるのはこれが初めてとなる。
「夫がいつもお世話になっております」
 突然の不躾な来訪者にも礼儀として一応頭を下げた希恵子だが、胸の内では全然違う感情を抱いた。
(嫌な、感じ)
 それが希恵子から見た、黛の第一印象。
 遊び慣れた感じの風貌にぎらついた雰囲気をぷんぷん醸す鋭い目つきが不快感を誘った。
 和臣より一回りも年上だが、温厚でいかにも善良そうな夫と比べると油っぽいエネルギーの差は歴然。こういうタイプの男が、希恵子は昔からどうにも苦手である。
 だが今は、自分の好みをどうこう言っている場合ではない。
「お、夫は、なぜ借金を?」
 絞り出すように、希恵子が尋ねた。
「どうやら投資に失敗したようです。FXか何かだったらしく、元手よりもマイナスになってしまったんですな。で、それを取り返そうと焦ってさらに手を広げ、気がつけば借金まみれになっていた、と。そういうわけです」
 黛は冷静に、講義でもするような調子で経緯を説明する。
「そ、そんな、ことが……」
 希恵子はそう言ったきり、二の句を継ぐことができなかった。
 にわかには信じがたい話だった。真面目で誠実でお人好しが取り柄の和臣がそんな大それた真似をするなど、希恵子には想像すらできなかった。
「失礼ですが、その……し、証拠はあるんですか?」
「証拠ですか? ええ、ございますとも」
 詰め寄る希恵子をいなすように笑うと、黛はスーツの懐へ手を伸ばした。
「こちらを、お聞きください」
 小型のICレコーダーを取り出し、再生を始める。
「黛さん、僕は……僕は、もう駄目です」
「!」
 その一言を耳にした瞬間、希恵子は大きく目を見開いた。
 それは自分が愛する夫の、誰より間違えようのない男の、初めて聞く絶望に満ちた、声。
「落ち着くんだ、和臣くん」
「そう言われても、こんなことになってしまって、僕はもうどうすればいいのか……」
 ぐす、と鼻水をすする音が、スピーカーから耳障りに響く。


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[ 2017/11/26 12:01 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・2

          1

 街外れの一角に、借家がある。
 一応一軒家ではあるが、敷地は狭く庭もない小さな平屋建て。築年数は優に四十年を超えており、間取りもやっとの1LDKだ。立地や交通の便もよくないため、どう甘く見積もっても高額の家賃は設定できそうにない。
 そんな安普請のリビングで話をしているのは、妙齢の女と中年の男。
 小さなテーブルを挟むように一台ずつ置かれたソファーに座って、膝を突き合わせるように正対している。
「あの……もう一度、仰っていただけますか?」
 古沢希恵子(ふるさわきえこ)は、自分が何を言われたか分からないといった顔で、眼前の男に聞き返した。
「ですから」
 黛匡一(まゆずみきょういち)は言葉を一つ挟むと、
「お宅の旦那さん、和臣(かずおみ)くんには五百万の借金があります。しかも消費者金融で借りているので利息はかさむ一方。そのうち首が回らなくなる危険があります」
 落ち着いた低音で淡々と同じ説明を繰り返す。
「ご、五百……万……」
 ようやく事態が飲み込めてきたのか、涼やかな希恵子の声がだんだんと震え始めた。
 肩まで伸びたやや癖のある黒髪に、細く伸びた美しい眉。柔和だが意志の強さを感じさせる瞳は宝石の輝きを放ち、通った鼻筋と潤った唇は見る者を否応なく惹きつけた。白ブラウスにベージュのスカートというぱっとしない格好だが、地味な服装の下にむっちり柔らかな魅惑の肢体が隠れているのは一目瞭然である。
「そんな、大金……」
 二十八という年齢を迎え、端麗な容姿にさらなる磨きがかかっている希恵子だが、今はその白い肌をさらに青白くして挙動不審に目を泳がせるばかりだ。
「本当は奥さんには秘密で、という話だったんですがね」
 希恵子の狼狽ぶりをじっくりと舐めるように観察しながら、黛が話を続ける。
「それではあんまりですし、私にちょっといい考えがあるものですから、和臣くんには内緒でこうしてお邪魔させてもらいました」
 今年で四十三歳になる黛だが、外見からくる印象はそれより随分と若い。
 白髪や薄毛とは無縁の豊かな髪と艶のいい褐色の肌が、精悍な顔立ちによく似合っていた。グレーの高級スーツに包まれた身体はしっかりと締まっており、メタボなどとはおよそ縁遠い体型をしている。


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[ 2017/11/25 11:49 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)

愛のすきまで交わって・1

          序

 街の中心部にほど近い、高級マンションの一室。
 部屋数の少ない上層階にあって防音も完璧に近いため、隣人トラブルなどとはおよそ無縁の4LDKは、昼に入った家事代行業者によって今日もしっかりと清潔が維持されていた。
「……ふん」
 立入禁止の札が掛かった小部屋には、ガウン姿の男。
 まるでどこかの社長室にでもありそうな革張りの椅子に座って、黒檀の机上に置かれた大型モニターを冷ややかな目で見つめている。
「あ、あっ、あぁんっ! すごい、すごいのぉ! だめ、だめっ! もうだめぇっ! イく、イくっ、イぐ、イぐっ、イっぢゃううううぅっ!」
 傍に備え付けられたスピーカーから流れてくるのは、あまりにもけたたましすぎてほとんど騒音と化した、嬌声。
「全く……うるさい女だ」
 いかにもつまらなそうな顔で吐き捨てると、男はクリエイターが使うようなスペックの高いパソコンの本体から、DVDを取り出した。
〈二十四歳OL・香菜子 その4 完〉
 手書きのラベルが貼られたプラスチックケースに、円盤をそっとしまい込む。
「まあ、いいか。どうせこいつも、もう願い下げだしな」
 呟きながら立ち上がると、壁際にそびえる本棚の前にゆっくりと歩を進めた。
「よっ、と」
 鍵付きの重厚な扉を開く。
 中には、手にしているものと同じタイプのディスクケースがずらり。
〈二十二歳女子大生・千佳 その1〉
〈三十一歳シングルマザー・康恵 その2〉
〈三十八歳未亡人・綾乃 その3〉
 などと記されたケースが、綺麗に列をなしてびっしりと並んでいる。
「これでよし、と」
 棚にさらなる一枚を追加すると、男は薄暗い部屋を出てリビングへ向かった。
 しゃれたバーカウンターに足を踏み入れ、いかにも値の張りそうなクリスタルガラスの杯を戸棚から引っ張り出すと、冷凍庫からいくつか氷をつかんで中に放り込む。
「ふむ……」
 数秒、熟考。
「今日はこいつでいくか」
 手を伸ばして引き寄せたのは、豪華な装飾が施されたウイスキーボトル。
「ほっ」
 慣れた手つきで栓を抜くと、澄んだ琥珀色の液体を氷の上からとくとくと注いだ。
「では、エンディングを祝して、乾杯」
 顔の前にひょいとグラスを掲げてから、一口目を軽く舌に染み込ませる。
「ふう……」
 満足そうに深い息を吐くと、男は静かな足どりでキッチンを出た。
 趣味のいいソファーとテーブルが置かれた広いリビングを通り抜けて、横に大きな窓の前でぴたりと立ち止まる。
 眼下に煌めくのは、渦巻く人間の欲望を覆い隠すかのような、眩い夜の景色。
「さて、次は……」
 ちかちかと瞬く街の灯を見下ろしながら、男が口を開く。
「そろそろあれを、狙ってみるとするか」
 芳醇な香りと味わいに湿った唇から、ささやかな呟きがこぼれた。


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[ 2017/11/24 11:38 ] 長編NTR 愛のすきまで交わって | TB(-) | CM(0)