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プチNTR2~アパートの鍵、貸します~

「んっ、んんっ、あ、ああぁっ!」
 女は男の上にまたがり、その柔らかな秘部で屹立した剛直を飲み込んでいた。
「だ、出して! 中に出して! 今日は安全だから! 大丈夫だからぁ!」
 大声でそう叫びながら、男の精を貪り食うようにぐいぐいといやらしく腰を振る。
「……んっ!」
 男が仰向けのままびくびくっと震えると、
「あ、あっ、ああああぁーっ!」
 女は長い髪を振り乱すようにのけぞり、そのまま絶頂を迎えた。
 狭い一室。男と女。濃密で甘美な、ひと時。
(そ、そんな……そんな……)
 その一部始終を間仕切りカーテンのすきまから目撃していたのは、衝撃に身を震わせながらその場に立ち尽くす、一人の青年であった。

        *          *          *

 宮下智哉(みやしたともや)は、地元ではそこそこ有名な大学に通う二十歳。
 見た目は可も不可もなく、頭の出来は中の上。性格は明るいと暗いの中間で、これといった特技があるわけでもない。
 そんなどこを取っても「何の変哲もない兄ちゃん」の域を出ない智哉だが、ただ一つだけ、他人と違う点があった。
 それは――。

「智哉、今晩また頼むわ」
「ああ、いいよ。何時にする?」
「一杯飲んでからの予定だから……九時かな」
「泊まりか?」
「いや、二時間。彼女んち門限厳しいらしくてさ。泊まりは無理っぽい」
「そっか。じゃあ料金はいつも通り、一時間千円な。延長は十分につき二百円」
「おう、分かった。じゃあよろしくぅ」

 智哉は、自室のレンタルという少々珍しい副業で金を稼いでいる。
「頼むよ、部屋貸してくんない? 彼女ラブホは嫌いって言うんだよ。でもお互い実家で家は無理だし、他に手頃な場所もないし……」
 ある友人のそんな頼みが、このささやかなビジネスを思いつくきっかけだった。
 智哉の住むアパートが、大学近くで繁華街へのアクセスもいい割に騒がしくない物件だったこともあり、商売はすぐ軌道に乗った。主に実家暮らしの連中に重宝されて、口コミでさらに多くの依頼が舞い込んだ。
 正直、ボロい商売だった。
 うまくすれば、ひと月のバイト分くらい余裕で稼ぐことができた。
 働くのがそれほど好きではない智哉にとって、それは実にありがたい収入であった。

「あー、あのさ、智哉」
「ん?」
「俺今月金欠でさ、そろそろやばいんだわ。代わりに講義のノートどれでも提供するからさ、今回はそれで勘弁してくんない?」
「……仕方ない。今回だけだぞ」

 中にはこんな風に、現金以外の何かで支払いを済ませる者もいたが、智哉にとってはそれも悪くなかった。価値のないものを提示されれば、すぐに断ればいいだけの話だ。
 営業時間は基本的に夜だが、講義の空き時間にちょっと、みたいな奴を対象に昼間の依頼も受けつけている。
 家を空けること自体は何の苦にもならなかった。
 繁華街の近くなので時間はいくらでも潰せたし、何なら漫画喫茶で一晩過ごすくらいしても全然構わなかった。
 部屋を貸し始めてから、智哉は多くの客と出会った。
 この方が興奮するからと同伴をお願いする者。AVよろしく撮影を希望する者。姿を見せず物陰から覗いてくれと注文する者。様々な性的嗜好が、日々智哉の前で赤裸々に晒された。
 時には、とんでもないプレイに出くわすこともあった。
「ほら、あたしのおしっこ飲むとこ、ガン見されてるわよ。いいの? これがいいの?」
「おおー、最高だ、最高だー。もっと見てくれー、もっとじょぼじょぼ飲ませてくれー」
 大学で毎日のように顔を合わせる男が、これまた顔なじみの女の尿を浴びながら美味そうに喉を鳴らす姿を見せつけられた時には、さすがの智哉もちょっと複雑な気分になった。
 しかし、そこは商売。内心では呆れつつも、割り切って要求に応えた。
(我ながら、いい目のつけどころだったよな)
 智哉は心の中で常々、己が生み出した思いつきをそう自画自賛している。
 デメリットがあるとはいっても、それでメリットが消えるわけではない。むしろ差し引きを考えれば圧倒的にプラス。そう思える時点で、このビジネスは間違いなく成功といえた。
 だがその反面、智哉はこうも思うのだ。
(いつかは……)
 人に貸すばかりでなく、自分のためにあの部屋を使いたい、と。
 かわいい彼女を連れ込んで、朝から晩まで一日中抱き通して、講義なんか気にすることなくともに眠る。そんな青春真っ盛りの時間を、できれば自分も過ごしてみたい、と。
 相手のあてだって、ないことはない。
 白藤麻里(しらふじまり)。
 大学で同じゼミになり、重なる講義も多かったので自然と話すようになった。映画や音楽の趣味が近いため、互いのおすすめを教え合うことも多い。
 背中にさらりと伸びた黒髪と色白の整った顔立ちは、いかにも清楚なお嬢様といった印象を周囲に与えるが、当の本人は結構気さくな性格で、智哉のような目立たないタイプの人間にも笑顔で話しかけてくれた。
 その一方で身持ちが固いというか、守るべきところはしっかり守っているようで、これまで麻里に恋愛話が持ち上がったことは一度もなかった。美人で人気のある麻里に彼氏がいないという事実は学内でも不思議がられており、常に噂の的となっていた。
(だったら、俺がいつか、麻里ちゃんと……)
 今の生活にそれなりの満足感を覚えながら日々を過ごしつつも、智哉の胸にはいつもそんな思いが燻っているのであった。

        *          *          *

「宮下、ヤりたい時に部屋貸してくれるんだって?」
 その日も、智哉は依頼を受けた。
 相手の名前は、新井流(あらいりゅう)。
 見た目から喋り方から全てが軽い感じで、まさに今風のお洒落な大学生といった男だ。
 一応知った顔ではあるが、特に話したことはない。女を取っかえ引っかえという話も聞くが、それも所詮は噂の範囲内でしかなかった。
「いやー、友達から聞いてさ。彼女のションベン飲むとこ宮下に見られてすっげー興奮した、とか言ってた。俺も今度やろっかなー。ま。俺はどっちかといえば飲ます派だけど」
「……」
 聞いてもいない趣味を勝手に暴露する流に、智哉は沈黙で応じた。
「貸すのは構わないけど……俺は何かするの?」
「んにゃ、いいわ。だんだんすげーことやって調教してくつもりだから、そん時には手伝ってもらうかもしんないけど、今回はとりあえず二人っきりにして」
 智哉の質問に、流は首を振って答えた。
「分かった。時間は?」
「明日の昼休みと三限だから……一時から三時までで」
 その時間帯は麻里と一緒になるゼミの前で、智哉にとっても空き時間だったが、まあそれは仕方ない。最近は昼の客が少し減っていたので、ご新規さんは歓迎だった。
「じゃあ二千円。延長は十分につき二百円な。メールくれればいいから」
「オッケーオッケー」
 事務的に料金を伝える智哉に、流は満面の笑みを浮かべながら親指と人差し指で輪を作ってそう返す。
「いやー、安いし近いし静かだし、マジ助かるわ。ほんとサンキューな、宮下」
「ああ。よろしければ今後もどうぞご贔屓に」
 いかにも軽薄な乗りで嬉しそうに肩を叩いてくる流に、智哉は精一杯の愛想笑いで応えた。

        *          *          *

「うわ……やっべ」
 整え直したベッドの上で、智哉は思わずそう漏らした。
 時計の針は午後一時を少し回っている。完全に寝坊だ。
 昼前には家を空ける予定だったのだが、昨日の晩に軽い暇潰しのつもりで始めたオンラインゲームになぜかハマって抜け出せなくなり、結局ほぼ徹夜になったのが災いした。
(少しだけのつもりだったのに……)
 急いで準備をしながら、智哉は後悔の念に唇を噛んだ。眠ったおかげで頭はだいぶ軽いが、その代償が大事なビジネスの信用問題というのでは割に合わなすぎる。
「よっ、と」
 最低限の整理整頓を済ませると、智哉は部屋の中央に設置されたレールカーテンを勢いよく走らせ、十二畳のワンルームを六畳二間に早変わりさせた。風呂場やトイレといった水回りがある玄関側にベッドとソファーを置いて、客にはそちらを貸す。机や本棚などがある反対側は智哉のプライベートスペースということで立入禁止の決まりだ。
「……げ」
 廊下から、足音が近づいてきた。
 賑やかな男女の話し声が徐々に大きくなり、やがて家の前でぴたりと止まる。
 ガチャガチャと鍵が回って、玄関のドアがすっと開いた。
「うぉっと」
 智哉は慌てて奥の自分用スペースに飛び込むと、片膝を立ててカーテンの傍に身を潜める。
「ささ、入って入って」
 厚いカーテン越しに、流の声が聞こえた。
(どうする……?)
 智哉の心臓がばくばくと音を立てた。最悪、息を殺し、気配を消したままここに留まるのもありだとは思うが、ばれずに出ていけるならそれに越したことはない。
(とりあえず、状況を……)
 悪いとは思いつつも、智哉は注意深い動きで仕切りの向こうをそっと窺った。
(なっ!!)
 いきなり飛び込んできた衝撃の光景に、さほど大きくもない智哉の目が愕然と開く。
「へー、いい部屋だね」
 流の後ろでのんきにそんなことを言っている女は――白藤麻里であった。
(まっ……麻里ちゃん……何で、あいつと……)
 智哉はただ呆然とその場に立ち尽くして、瞬き一つせずに麻里を見つめる。
 ルール違反だ。離れろ。目を閉じて、耳をふさげ。とにかく、他人の時間を勝手に覗くのをやめるんだ、今すぐに。
 そんな考えが次々浮かんでくるが、それらの命令は一つとして実行されることのないまま、どこへともなく霧消してしまった。
「へへー、でしょでしょ。友達に聞いてやっと見つけたんだぜ、ここ。麻里ちゃん、人生初の
エッチにラブホはやだって言うしさー。かといって二人とも実家だから家でもヤれないし」
「!」
 得意気に語る流の言葉に、智哉はいきなり頭を殴られたような衝撃を受けた。
 今の話だと、麻里はまだ処女ということになる。
 そして、今日これからこの部屋で行われる行為が――初体験。
「じゃ、あんま時間もないしさ、さっそく始めようぜー、麻里ちゃん」
「え? で、でもシャワーとか……」
 流の言葉に、麻里は戸惑うような表情を浮かべた。
「あー、いいよいいよ、そんなの。できるだけナマの麻里ちゃんを感じたいんだ、俺」
「え、えぇ?」
「ささ、まずは服脱ごーよ。俺も脱ぐからさ。あ、パンツだけは残しといてね」
「う、うん……」
 まだ何となく釈然としない様子の麻里だが、それでも流の言葉を受け入れ、柔らかな色彩のワンピースをゆっくり脱ぐと、淡い黄色のブラをそっと外した。
(う、うお……)
 完全に出歯亀状態となった智哉の両目が、柔らかな膨らみに釘づけとなる。
 麻里の裸体は、とてつもなく美しかった。
 シミひとつない色白のきめ細やかな肌が目に眩しい。無駄な肉の少ない体型だが、それでも出るところはしっかり出ていてメリハリがあった。元からスタイルのよさは際立っていたが、こうして服を脱いでみると、それがますますはっきりと分かる。
(す、すげー……)
 目を閉じるとか出ていくとか、とてもじゃないがそんなことはできそうになかった。 智哉の瞼はテープでも貼られたように落ちるのを拒み、足は根でも生やしたようにその場を離れようとしない。
「おー、さっすが麻里ちゃん。おっぱいの形もいいし、乳首もきれーなピンクじゃん」
 丸い双丘をしげしげと眺めると、流は両手の人差し指を立てて先端についた突起をこりこり弄った。
「んっ……」
 恥ずかしいような、くすぐったいような、何とも色っぽい声を漏らして麻里が顔を背ける。
「こっちはどーかなー」
 流はその場にあぐらで座ると、器用に足だけを動かして麻里の下半身ににじり寄った。
「あ、少し足開いてねー」
 そう指示を出すと、ブラと同様の淡い黄色に揃えられたパンティーに指をかけて、羞恥心を煽るようにゆっくりと膝の上まで下ろす。
「むんっ」
 そしていきなり股に顔をねじ込むと、じゅるじゅる音を立てて麻里の陰部を舐め始めた。
「ひっ……!」
 怖じけたように身をこわばらせる麻里だが、流の舌は止まらない。徐々に漏れ始めた淫水を残さず綺麗に吸い尽くしながら、肉襞の臭いと味を堪能していく。
「へー、結構クセのある味だねー、麻里ちゃんのマ○コ。でもいいわー、これ。かなり好きなテイスト。やっぱ蒸れて臭いがきつくなった方がいいよねー、こういうのは」
「ん、んんっ……んっ……」
 グルメ評論家のような口調で感想を述べる流だが、麻里の方に言葉を返す余裕はなかった。迫り来る興奮の前に理性を保つのが精一杯という様子で、何度も首を横に振る。
「よし、じゃあベッド行こうか」
 肉びらの味をひとしきり楽しむと、流は麻里の手を引いてベッドに仰向けで寝かせた。
「ま、今日は初めてだし、フェラとかはなしかな。まずは開通と拡張に集中ってことで」
 ぺらぺらと本日の予定を喋ると、麻里の上に覆いかぶさって唇に深いキスをする。
(!)
 カーテンの陰で微動だにせずに事態の推移を見つめていた智哉の肩が、びくんと震えた。
 見てはいけない。
 見たくもない。
 でも、見てしまった。
(っ……う……)
 胃が潰れそうな感覚に襲われながら、焦点の合わない目で唇を奪われる麻里を見つめる。
「へへ」
 長いキスを終えると、流は両手を麻里の胸に向けた。親指と人差し指で乳首をつまみ、くいくいと倒しながら四方八方に引っ張る。
「んっ……んん……」
 麻里の口から甘い声が漏れたのを確かめると、流は両の乳房をぐいと真ん中に寄せ、乳首を二つまとめてねぶり始めた。
「やっ……やぁっ……」
 切なげな声を出す麻里をよそに、吸ったり、甘噛みをしたり、含んで舌で転がしたり。勝手気ままに薄桃色の肉粒を蹂躙していく。
「ま、とりあえずこんなもんかな。さてさて、濡れ具合はっと」
 クイズの答え合わせでもするように、流が麻里の股ぐらを覗き込んだ。そして割れ目を指でぶにぶに弄ったかと思うと、満足げな顔でにっこりと微笑む。
「うん、いいね。ひょっとして麻里ちゃん、かなーり感度いいんじゃない?」
「そ、そうなの、かな……よく、分かんない」
「いいよいいよ、間違いない。これなら初めてでもすっげーキモチいいんじゃないかな」
 首を傾げる麻里の顔を、やや濃いめの陰毛越しに眺めながら、流は相変わらずの軽い調子でそう請け合った。
「さて。じゃ、そういうことで、いよいよ本番、いきまーす」
 宣言するように言うと、流がそそり立つペニスをおもむろに麻里の穴へと寄せる。
「え? ちょ、ちょっと、コンドーム……」
「うん、それは、まあまあ」
 要求をあやふやに受け流すと、流は肉棒の先端を陰部に押しつけたまま、麻里の端整な顔をじっと見つめた。
「言ったよね、俺。できるだけナマの麻里ちゃんを感じたいって。大好きな子と、できるだけ直接触れ合う。それってそんなに悪いことなの?」
「そ、それは……でも……」
 反論しようとする麻里を制するように、流はさらに真面目な顔と口調で語りかける。
「悪くなんかない。むしろ大事なことだろ。それにせっかくの初めてなんだしさ、何としてもキモチよくしてあげたいんだよ、麻里ちゃんのこと。困らせるような真似は絶対しないって。約束するよ。だからさ、いいでしょ?」
「う、うん……だったら……」
 詐欺師のように畳みかける流の勢いに押されて、麻里の首が小さく縦に揺れた。
(お、おい……おいおい!)
 会話の一部始終を耳にした智哉が、酸欠の金魚のように目をむき、口をぱくぱくさせる。
 どんなにそれっぽく正当化しても、ナマでやれば危険なことに変わりはない。
 すぐに飛び出していって麻里から流をひっぺがしてやりたかったが、そうはできない自分の立場が何とももどかしかった。
「ありがとう。やっぱ優しいね、麻里ちゃん。じゃあ、いくよ」
 物陰で歯ぎしりする智哉の存在など知る由もなく、流が正常位で挿入を始める。
「んっ……あっ……いたっ……」
(あ、あ、ああ……)
 麻里の囁くような小声が耳に入るたび、智哉の心臓が破れそうなほどずきずきと痛んだ。
「はい、かいつーう。おめでとー」
 あっけなく部屋に響いたのは、愉悦に満ちた流の声。
「思ったよりスムーズだったね。血も少ししか出てないし、あんま痛くなかったでしょ?」
「う、うん……」
「よーし、じゃあ拡げっからねー。見よ、この俺様の華麗なるテクニックを、なんちて」
 さっきまでの真剣さはどこへやら、流はふざけた調子で腰を左右にぐりぐりと動かした。
「あっ、いや、あああっ!」
 その叫びは未知への恐怖か、それとも腹の底から湧き上がる快感の証か。とにかく、麻里の口からはしたないほどの大声が上がる。
「おー、いいねいいねー。そんな声出されたらますます燃えてくるわー」
 にやりと笑ってそう言うと、流は力強いピストンで麻里を突き始めた。上下左右、こなれた腰つきで、まだうっすら血のにじむ花弁を容赦なくほじくり返す。
「はい、舌絡めるよー」
「ん、んぐっ!」
「ほい、今度はこっち」
「いやっ! うぅんあっ!」
 合間にキスや胸への愛撫を挟みながらの、緩急自在な抽送が続いた。
「いいでしょ、俺の。長くて硬くてキモチいいとこに届くって、他の子にも評判なんだ」
「あ、んんっ! いいっ! いいっ! 流くんの、キモチいいのぉ!」
 何とも下品な流の自慢にも、麻里は我を忘れたように乱れながら応じる。
「じゃあそろそろ一発目、いってみよっかなー。あ、記念だから中に出すねー」
「え? ん、んあっ、でもっ……!」
 最後に残ったかけらほどの理性で、麻里が異議を唱えようとした。
 だが、
「今日、危ない日なの?」
「う、ううんっ!」
「そ。じゃー別にいいじゃん。なんにも困ることなーし」
「んっ、んっ、んんっ!」
「いいよね?」
「んんんっ!」
「い・い・よ・ね?」
 喘ぐ麻里の顔を正面から見据えると、流は語調に合わせてリズムを変えながら膣内を執拗にこすり上げた。
「あっ! あうぅっ! う、うん!」
「はい、中出しオッケー出ましたー。じゃあ体勢変えよっか。もっとキモチよくなるよー」
 挿入が外れないように注意しながら麻里を起こすと、そのまま自分だけ寝転んで騎乗位へと移行する。
「ふんっ!」
 そして一旦麻里の腰を持ち上げると、渾身の力で一気に奥まで貫き通した。
「んあああああっ!」
 麻里が獣のように全身を大きく震わせ、いやいやをするように何度も首を振る。
「おー、ハデにイッたねー。初めてなのにこんな本イキしちゃうなんてすごいねー」
 薄笑いでそんなことを呟くと、流がさらに激しく突き上げながら言い募った。
「じゃあイッたところでもう一回確認。自分の口でハッキリ言って」
「んっ、あぁっ! だ、出して! 中に出して! 今日は安全だから! 大丈夫だからぁ!」
 流の精を全て搾り取ろうとするかのように淫らな動きで腰をグラインドさせながら、麻里が大声で叫ぶ。
「はい、よく言えましたー。じゃあいくよ……んっ!」
 流が仰向けのまま、とどめを刺すようにフィニッシュへ持ち込むと、
「あ、あっ、ああああぁーっ!」
 直後に麻里も長い黒髪を振り乱すようにのけぞり、同時に最後の気をやった。
(そ、そんな……そんな……)
 狭い一室で繰り広げられる、男と女の、濃厚な交わり。
 その一部始終を間仕切りカーテンのすきまから目撃した智哉は、衝撃に身を震わせながら、ただぼんやりとその場に立ち尽くすばかりであった。


 汗ばんだ裸の若い男女が、並んで天井を見ながらベッドに転がっている。
「ふう、すっきりした。やっぱ三回はヤんないとね。麻里ちゃんもよかったでしょ?」
「ぅ……ん……」
「はは、まともに返事もできないほどイきまくっちゃった? ほんと、感度いいねー」
 流はにっこり笑うと、横を向いて麻里の身体にぎゅっと抱きついた。
「ま、いいや。麻里ちゃんすっげーいいカラダしてるし、俺ともかなり相性よさげだからさ、またヤろーよ、こんな風に。ずんずん」
「う、うん、でも……」
「……もしかして、まだなんか気になってる?」
「……」
 無言のまま、麻里が小さく頷く。
「他の男とか?」
「……」
 また、首肯。
「へー、そんなのいたんだ。どんな奴?」
「ゼミが一緒でよく話すの。音楽や映画の趣味が合って、おすすめにもハズレがなくて……」
(なっ……!)
 カーテンの裏で黙ったままうつむいていた智哉の顔が、一瞬びくんと跳ね上がった。
「ふーん」
 流は素っ気ない返事をすると、さらに続ける。
「でもさ、そいつ麻里ちゃんに好きだって言ったわけじゃないんでしょ?」
「え? う、うん」
「ゼミが一緒でよく話して趣味も合うのに何も言わないってことはさ、つまりただの友達ってことだよね?」
「そ、それは、そうかもしれないけど……」
 困ったように視線を泳がせる麻里を、流は腕に力を込めて胸の中へと引き寄せた。
「だったらさ、いいじゃん。そんなよく分かんない奴のことより、俺は麻里ちゃんが好きで、麻里ちゃんは今俺とこうしてるってことの方がよっぽど重要だよ」
「で、でも……流くん、他にも……」
「だーいじょぶだいじょぶ。前にも言った通り、他の女は全部切るって。絶対。約束」
「本当に絶対……約束?」
「うん、絶対に約束」
「うん……なら……いい」
 流の言葉は傍から聞けばすぐ嘘と分かる軽々なものだったが、それでも麻里は押し切られるように小さく頷き、同意した。
「おし、きーまりー。学内のアイドル麻里ちゃん、ついにゲットだぜい。しゃあっ!」
「……」
 拳を固め、派手なガッツポーズを作る流をちらりと見やって、麻里は頬を赤らめた。それは事後の興奮がまだ冷めないのか、それとも何か別の感情がよぎったか。
「あ、やっべ。そろそろ時間だ。大学戻ろ。次の講義、サボれねーし」
 枕元に置かれたスマホを見た流が、慌ててベッドから飛び降りる。
「う、うん。あたしも、ゼミ……」
 麻里も生まれたての子鹿のようにおぼつかない動きで立ち上がった。しなやかに伸びた脚が二歩、三歩と動くと、張りのある尻がそれに合わせてぷるぷると揺れる。
 ほどなく、退室の準備が整うと。
「麻里ちゃん、忘れ物ないねー。余計なもん残すとめんどーだよー」
「うん、大丈夫。でも本当にここ、誰の部屋なの? 流くんの友達?」
「あー、うん……ま、今は秘密。そのうち分かると思うよー」
 玄関のドアが開いて、かちゃんと小さな音を立てながら閉まった。


 全ての、事が済んで。
「……」
 流と麻里の残した淫靡な臭気が漂う部屋では、智哉がカーテンを開けることさえも出来ずにただ呆然とへたり込んでいた。

「へー、そんなのいたんだ。どんな奴?」
「ゼミが一緒でよく話すの。音楽や映画の趣味が合って、おすすめにもハズレがなくて……」

 真っ白になった頭の奥で、流と麻里の会話が何度も何度もリピートされる。
(麻里ちゃん……)
 自分にだって、可能性はあった。
 どこかで、ほんの少し勇気を出していれば。
 もしかしたら、両想いになれたかもしれなかった。
 ――なのに。

「んっ、あぁっ! だ、出して! 中に出して! 今日は安全だから! 大丈夫だからぁ!」

 少なからず好意を抱いている女が他の男に抱かれ、中出しを許したあげく、腰を振って自ら絶頂を求める。
 そんな場面を見せつけられたら、男は一体どうするだろう。
 泣くだろうか、怒るだろうか、それとも逃げるだろうか。
「麻里、ちゃん……」
 宮下智哉は、そのどれでもなかった。
「ぐっ……」
 智哉はいきなり立ち上がると、猛然とトイレに駆け込んで、そのまま凄まじい勢いで嘔吐を始めた。



※おまけストーリー『アパートの鍵、貸します ――End――』はこちらから!
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[ 2014/12/12 23:21 ] プチNTR | TB(-) | CM(0)
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